August 18, 2004

Love is stronger than war (8/17)

sarmadamara_in_love/IMGP3090
ただでさえ8月のバグダッドの暑さは尋常ではないのだが、今日はさらに熱く感じる。サラマッドが最愛の妻アマラを連れて事務所に来たからだ。国民大会議の最中に陸路でイラク入りしたので本当に心配したが、道中イラクポリスは多かったものの、特に何事もなく順調にバグダッド街道を走ってきたという。アマラを迎えに行ったサラマッドは国境で彼女の到着を約12時間も待っていたそうだ。ほとんど寝ていないので二人とも疲れているとは言っていたが、幸せの絶頂にいる新婚二人の表情はもう緩みっぱなしで、見ているだけでこちらも幸せな気持ちになってくる。

振り返れば二人の馴れ初めは昨年のイラク戦争の最中。アマラはフランスから来たHUMAN SHIELDS(人間の盾)で、そのガイドをしていたサラマッドが彼女に恋に落ち、やはり盾として浄水場にいた私が彼のラブレターの代筆をしたのがことの始まりだった。

~以下「空襲下の人々」から~
 戦うことが人間の本能というならば、愛することもまた人間の本能です。われわれの面倒を見てくれていたイラク人ガイドが、「人間の盾」の外国人女性との恋に落ちたのです。ある日彼から英語は話せるがうまく書けないということでラブレターの代筆を頼まれました。「この戦争が終わったら、どこか外国で結婚しよう」といった内容の、書いていて赤面してしまうほど純粋で心のこもったラブレターでした。もちろんイラクでは外国人との結婚は容易ではありませんし、こうした手紙のやりとりが発覚すれば問題なのは言うまでもありません。それでも私を信用して頼んでくれたことが嬉しくて、空襲など意にも介さず深夜までかけて丁寧に手紙を仕上げました。その翌日彼は無事に手紙を彼女に手渡し、翌々日にはとてもいい返事がもらえたということで、私と二人で心から喜び合いました。その後、以前はなかなか許可されなかった夜間の外出等の無理なお願いをしても、「オーケー、マイフレンド」と快く許可してくれるようになったのです。独裁政権下とはいえ人の心までは管理できないし、トマホークミサイルを何発打ち込んでも人が恋をするのはとめられない。その彼は地上戦が激しくなってから浄水場には来られなくなり、結局さよならすら言えないまま別れてしまいました。バグダッド陥落直前にどこかへ避難したらしいとのことです。
~以上引用終わり~
ちなみに当時の絆からPEACE ONが立ち上がったわけである。

その後二人は何度もケンカを繰り返し、砂塵にまみれながらも、戦時下に芽生えた恋を大切に育んでいって、前回5月のファルージャ支援活動を終えた頃に結婚。ついに花を咲かせたのだ。馨しい香りと共に舞い込んできた喜ばしいこのしらせは、当時イラクを巡る殺伐とした事件に疲れ果てていた私の心をどれだけ癒したことだろうか。’Love is stronger than war’ 愛の力の大きさを改めて知った。

アートプロジェクトの打合せに来ていた画家のハニさんとお祝いの歌を歌う。Fog nakal fog、ナツメヤシの木のてっぺんに登った彼を見守る恋人の想いを歌った微笑ましいラブソングだ。見る見るうちに二人の顔は熟したナツメヤシの甘い実のようにとろけていく・・・。

そういえば今日は停電の時間が短くて助かった。二人があまりに熱いので、発電所も気を遣ってくれたのだろうか。

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