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August 22, 2007

壊された日常のかけら~バグダードからモースル~

ここ最近はかおりんにまかせっきりだったので、久しぶりにこちらでもイラクからの声を少し紹介。先だって日本に来てくれたカーシムのいるラマーディーなどアンバール州ではかなり状況が好転しているようで、(高遠さんのブログ参照)本当に嬉しい限りだが、こちらに届く便りによると、バグダード、モースルをはじめ他地域ではまだまだ厳しい。こうしてブログに書くのも正直しんどいけど、「このままでは何もないことになってしまうので、せめて僕の話だけでも伝えてほしい」という友の切なる声を、できるだけ伝えてみようと思う。

フランスから妻アマラと共にイラク北部モースルに帰ったサラマッド。ついに家族全員がバグダードからモースルに避難したのだ。まずは彼の親族や友人などから聞いたバグダードの様子から。

「特にチグリス河から東のラサファ地区はイランの手に落ちた。多くのイラン人が家族とともに移り住み、ペルシャ語が公然と飛び交っている」

「友人がイランの革命防衛隊の特殊部隊クドゥス軍に捕まった。収容所では、元イラク軍パイロットとしてかつてイランとの戦争で戦っていた人間ばかり400家族が3年も拘束されていて、連日のように拷問、強姦を受け一日に一人か二人は殺されているという。友人は元パイロットではないのに拘束されていて、何とか疑いが晴れて数日で解放されたものの、決め手は彼の母親がシーア派だったからだそうだ。友人が拘束中尋問されていたとき、担当員に『この男のことを知らないか』と写真を見せられたが、それが元パイロットである私の写真だったと言う。私は恐ろしくなって、偽のIDカードをつくりシーア派に変装してバグダードから脱出した」

「7人の従業員が職場に向うバスに乗っていると、突然ドライバーが7人に銃を突きつけシーア派地区に連れて行って、その先で7人の顔に硫酸をかけて殺してしまった。家族が遺体を発見したとき、IDカードがなければ身元確認すらできない状態だった」

他の話はかおりんが訳してくれたのでご覧ください

以上は今のバグダードの日常のごく一部に過ぎないそうで、避難してきた家族は「もはや選択肢などない」と言う。サラマッドも、今回バグダードでの活動は不可能だと諦めている。

さてモースル。

「全てが困難だ。電話も深夜12時過ぎないとかからないし、電気は3時間きて6時間停電、ひどい時は一日で3時間しかこない。この50度の暑さでどうやって生活できるのか、どうやって微笑むことができるのか、どうやって愛し合うことができるのか、なぜこんな状況で人々が生きようと思うのか理解できない。ここで生きるとはどういう意味をもっているんだろう?

一年前と比べて、ここモースルも劇的にひどくなっている。僕の家族も、他の家族にとってもここでは生活どころではない。電気もなくあまりの暑さに夜も眠れず、全ての物価が騰がっていて満足に食事もできない。

アマラも僕もひどい風邪をひいてしまった。四日前から注射を打っている。50度の暑さでどうやって風邪をひくかって?毎晩電気が来ない間は眠れずにベッドで泳げるほど汗びっしょりになってしまうんだ。そして電気がくる1,2時間で、耐え切れずにエアコンの前で眠ってしまうから汗が冷えて風邪をひいてしまう。ここの夜は本当に悪夢だよ。

そして昼も悪夢なんだ。今日はうちの隣で4人の若者がガソリンを売っていただけでクルド人民兵ペシュメルガに殺されたんだ。なぜって?販売禁止だって言ったのに、売るのを止めなかったからだって!僕らは彼らの靴とガソリン缶が血だらけになって通りに放置されていたのを見たよ。ここでは命がとても安くなっている。犬の命、羊の命のほうがむしろイラク人の命より高くなっているんだ。

今のイラクは完全に変わってしまったと言わなければならない。今日のイラクは君がかつて訪れたイラクのようではないんだ。今のイラクは人間のための国ではない。人殺し、ろくでなし、盗賊のための国だ。今のイラクでいい人なんかほとんど見つけられない。ごくわずか、一握りしかいない。今のイラク人は殺人者であり悪魔の息子と言わなければならない。こんなイラクを見ることになるとは、決して思っていなかった。イラクは死んでしまった・・・」

取り急ぎ今日はここまで。サラマッドの絶望はかつてなく深い。

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Comments

「現地イラク人からの報告」ということだけど、個人の見る視野というものは限りがある。彼ら(旧バース党支持者)の置かれた現状が悲惨であることは現実である。しかし、若干イメージが先行してしまってはいまいか。この、報告者の表現からすると、まるで「イラン人」「シーア派」が全ての元凶であるかのように捉えられてしまう。

たしかに、現場の末端では「宗派云々」を口実にする者たちがいるだろうが、この対立問題の発端は極めて政治的なものだと言えないか。

「現地の声」をそのまま伝えることに重点を置くと、「イメージ発信の垂れ流し」になってしまう。客観的立場にいる者が状況をより広い視野で分析することも必要だと思う。その上で批判することを批判するべきだ。

Posted by: wattan. | August 22, 2007 at 07:45 AM

wattan.

コメントありがとう。ご指摘の通り、この声を分析した何らかのコメントをつけてから載せるべきでしたね。疲れていたので、「取り急ぎここまで」として載せてしまったことは反省しています。

これまでもシーア派の友人からの報告も載せてバランスをとろうとしてきました。イラクにいる限りどちらも大変な状況にあるのは事実です。しかし特にバグダードに関する限り、スンナ派狩りなどが横行し、ある種の民族浄化のような状況でスンナ派の受難が続いているのは間違いありません。しかし一般報道では、一度に多くの人間が殺される事件しかなかなか扱われず、しかもいつも枕詞のように「スンナ派武装勢力による犯行とみられる・・・」と検証もないままに、まさに「イメージ発信の垂れ流し」状態が続いているわけですから、友人の憤りもよくわかります。

一般報道になかなか出ないところを伝えたいあまりに、そしてリアルな声を伝えたいあまりにほぼそのまま載せてしまいましたが、結果的に「イメージ発信の垂れ流し」の裏返しのようになってしまったのは事実ですね。ジャーナリストならその辺もっと慎重になれるのでしょうけど、友人のこととなると難しい・・・でも慎重にならなければいけないのは間違いないので、今後気をつけます。

Posted by: yatch | August 22, 2007 at 10:24 AM

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