« July 2007 | Main | September 2007 »

August 27, 2007

「アジアの変貌」にイラクアート

今日から始まった銀座中和ギャラリー恒例のアジアグループ展に、一点のみですが今回もイラクアート出展しています。5月に描いてもらったハニ・デラ・アリの新作をどうぞご覧ください。

「アジアの変貌~CHANGE OF ASIA~」
会期:8月27日(月)~9月1日(土)11:00~19:00(最終日16:00まで)
会場:中和ギャラリー(東京都中央区銀座6-4-8曽根ビル3階/03-3575-7620)

| | Comments (251) | TrackBack (0)

August 26, 2007

壊された日常のかけら~モースル情勢について~

引き続きサラマッドのメールからイラク現地情勢について。

北部モースルの治安状況もひどいようだが、宗派主義暴力の吹き荒れるバグダードとはまるで違うという。スンナ派が中心のモースルでは、宗派間暴力は非常に少なく、米軍、イラク軍、警察、クルド人民兵ペシュメルガに対する攻撃がほとんどのようだ。

そして反米抵抗勢力ではアル・カーイダの勢力が増しているようだ。高等教育を受けた人ですら今では公然と支持を表明してはばからず、モースルの3人に1人は支持者ではないかという。かつてはアル・カーイダに反対していた一般市民の多くも、今ではニュースで現政府のひどい仕打ちが報道されるたびにアル・カーイダ支持に傾いてきているようだ。

アル・カーイダを名乗る数人から聞いた話によると、周辺国から来ているメンバーもいるが、多くはイラク人で構成されている。主に金銭面で支援しているというそのうちの一人は55歳の元イラク軍の幹部で、現政府と米軍とペシュメルガを憎んでおり、彼らを殺害するのは当然だと言い放っていた。またその彼は厳格なイスラーム法による国家が必要だと説き、世俗的な人間は容赦しないと言って、今は息子達に自爆攻撃をさせることすら厭わず訓練に励んでいるという。

アル・カーイダと言っても、国際テロ組織として世界的にブランド化した名前を騙っているだけかもしれないし、その3人に1人と言う数字も根拠はよくわからない。ただ少なくともアル・カーイダを名乗るものが多くなっていて、彼らを支持している市民が急増していると言うのは間違いないようだ。

その背景の一つとして、状況の悪化からモースルの市民の多くが心のよりどころをイスラームの教えに求めていることを挙げている。女性の多くが頭髪を隠すヒジャーブを被り、顔も手も全て隠す人も増えていて、とにかく規律を厳密に守る人が急増しているというのだ。もちろんイスラームでは殺し合えと教えているわけではないので、以前はアル・カーイダなどむしろイスラームの印象を悪くすると嫌われてすらいた。しかし今では、市民の多くが米軍とそれに追随する者たちを激しく憎むようになってしまい、結果的にアル・カーイダはとてもいい場所を見つけてしまったようだという。彼が行くモスクにも礼拝のある金曜日になると宣伝ビラを配る男が立っているという。

以前はとても世俗的な国家で、アル・カーイダなどとは無縁だったイラク。対テロ戦争の結果がこれだから、全く皮肉としか言いようがない。

また、サッダーム人気も凄まじく、彼は殺されてからむしろここでは殉教者として称えられているそうだ。多くの壁には彼を英雄として賞賛する落書きで溢れ、現イラク政府側の警察官からすら彼を懐かしむ声をよく聞くという。

ところでモースルではここ最近外出禁止令が出ているという。8月14日、シンジャールという140km離れた町で起きた大規模自爆攻撃のせいだ。500人以上殺されたとの報道もある。(関連記事)イラクの少数宗派のひとつ、ヤズィディー教徒が標的になったという。イラクにはこうした少数宗派が数多く存在していて、これまでは平和裏に共存していた。そういえば昨年9月にアルビルを訪れたとき、道を案内してくれたおじさんから、「私はイスラーム教徒ではない。ヤズィディー教を知っているか?太陽に礼拝するんだ」と言われてこの宗教の存在を知った。ゾロアスター教にルーツを持ち、イスラームやキリスト教の神秘主義の思想などが混ざり合っているともいわれる。

米軍とイラク政府はいつものようにアル・カーイダの犯行だと言う。報道も相変わらずろくな検証なしにそれをなぞるだけである。しかし友人によると、シンジャールの人々の多くはイラク政府の仕業だと言っているようだ。事実はわからないが、モースル周辺では政府発表など信じられていないということはわかる。

故郷イラクの変わり果てた状況に絶望していたサラマッド。「ただ、ここモースルではバグダードと違って盗みなどは珍しく、一般市民同士はとても誠実にやりとりしている」と付け加えていたのがせめてもの救いだった。

| | Comments (5) | TrackBack (0)

August 22, 2007

前回記事の補足とお詫び

引き続きサラマッドのメールからイラク現地情勢について書こうと思ったのですが、前回の記事に対してコメント欄で指摘があったように、現地の声をそのまま載せただけでは、どうしても偏ったイメージを与えてしまう危険があるので、ここで少し補足しておきます。

友人でありイラク人現地スタッフのサラマッドの家族はイスラーム教スンナ派です。以前はスンナ派もシーア派も一般市民は特に大きな問題もなく共存していたバグダードですが、占領後政治的対立が激化して宗派間暴力に発展し一般市民も巻き込まれてしまった現状では、悲しくも両派の棲み分けが進んでいます。よって彼の周囲から聞ける話は、基本的にはスンナ派イラク人から見た現状のほんの一部、まさに壊された日常の「かけら」です。

同じスンナ派イラク人でも、地域によっては全く別の意見もあるでしょうし、シーア派イラク人ならなおさらでしょう。また、特にバグダードに関しては、住んでいる地域によって状況はかなり変わりますし、他地域への外出も困難なため、隣の地区で何が起きているのかもわからない状態です。乱立しているメディアも宗派主義に偏ったものが多いので、どのメディアを見るかによっても意見は大きく変わってくると聞きます。ですから今回は直接体験した声を大切にして紹介してみました。

今はイラク人というだけで、宗派民族国内外問わず多かれ少なかれ困難な状況に置かれているのは間違いありません。これまでシーア派イラク人からの意見も何度か取り上げてきました。ただ、私の友人にはスンナ派イラク人のほうが多いので、どうしても全体的にはスンナ派イラク人の見方に偏っているところはあると思います。

しかしまた、前記事のコメントレスにも書きましたが、一般報道で取り上げられるのは派手な事件ばかりで、しかもいつも枕詞のように「スンナ派武装勢力の犯行とみられる・・・」という憶測がついてまわるので、どうしても一般的にはスンナ派のイメージが悪くなってしまっています。実際には、バグダードではスンナ派狩りなどが横行して、まるで民族浄化のようなスンナ派受難が続いているのですが、そういう事実はあまり報道されていません。

友人の憤りはよくわかりますし、私としても、友人の「伝えてほしい」という声を無視することはできません。しかし指摘された通り、前回の記事のままでは背景の説明が足りないので、特に初めてこのブログを読んだ方には偏ったイメージを与えてしまう危険があるのは間違いありません。疲れていたからといって、あのような紹介をするべきではありませんでした。ここに補足のうえお詫びします。

本当はこのブログでこうした記事はあまり書きたくないし、活動に関する記事だけを書いていたいものですが、こうした現状が活動を妨げている現実もあるわけですから、決して避けて通ることはできないと考えています。それにしても、こうしてスンナ、シーアと補足しなければならないこと自体、このイラク戦争と占領がもたらした最大の悲劇のひとつなのかもしれません。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

壊された日常のかけら~バグダードからモースル~

ここ最近はかおりんにまかせっきりだったので、久しぶりにこちらでもイラクからの声を少し紹介。先だって日本に来てくれたカーシムのいるラマーディーなどアンバール州ではかなり状況が好転しているようで、(高遠さんのブログ参照)本当に嬉しい限りだが、こちらに届く便りによると、バグダード、モースルをはじめ他地域ではまだまだ厳しい。こうしてブログに書くのも正直しんどいけど、「このままでは何もないことになってしまうので、せめて僕の話だけでも伝えてほしい」という友の切なる声を、できるだけ伝えてみようと思う。

フランスから妻アマラと共にイラク北部モースルに帰ったサラマッド。ついに家族全員がバグダードからモースルに避難したのだ。まずは彼の親族や友人などから聞いたバグダードの様子から。

「特にチグリス河から東のラサファ地区はイランの手に落ちた。多くのイラン人が家族とともに移り住み、ペルシャ語が公然と飛び交っている」

「友人がイランの革命防衛隊の特殊部隊クドゥス軍に捕まった。収容所では、元イラク軍パイロットとしてかつてイランとの戦争で戦っていた人間ばかり400家族が3年も拘束されていて、連日のように拷問、強姦を受け一日に一人か二人は殺されているという。友人は元パイロットではないのに拘束されていて、何とか疑いが晴れて数日で解放されたものの、決め手は彼の母親がシーア派だったからだそうだ。友人が拘束中尋問されていたとき、担当員に『この男のことを知らないか』と写真を見せられたが、それが元パイロットである私の写真だったと言う。私は恐ろしくなって、偽のIDカードをつくりシーア派に変装してバグダードから脱出した」

「7人の従業員が職場に向うバスに乗っていると、突然ドライバーが7人に銃を突きつけシーア派地区に連れて行って、その先で7人の顔に硫酸をかけて殺してしまった。家族が遺体を発見したとき、IDカードがなければ身元確認すらできない状態だった」

他の話はかおりんが訳してくれたのでご覧ください

以上は今のバグダードの日常のごく一部に過ぎないそうで、避難してきた家族は「もはや選択肢などない」と言う。サラマッドも、今回バグダードでの活動は不可能だと諦めている。

さてモースル。

「全てが困難だ。電話も深夜12時過ぎないとかからないし、電気は3時間きて6時間停電、ひどい時は一日で3時間しかこない。この50度の暑さでどうやって生活できるのか、どうやって微笑むことができるのか、どうやって愛し合うことができるのか、なぜこんな状況で人々が生きようと思うのか理解できない。ここで生きるとはどういう意味をもっているんだろう?

一年前と比べて、ここモースルも劇的にひどくなっている。僕の家族も、他の家族にとってもここでは生活どころではない。電気もなくあまりの暑さに夜も眠れず、全ての物価が騰がっていて満足に食事もできない。

アマラも僕もひどい風邪をひいてしまった。四日前から注射を打っている。50度の暑さでどうやって風邪をひくかって?毎晩電気が来ない間は眠れずにベッドで泳げるほど汗びっしょりになってしまうんだ。そして電気がくる1,2時間で、耐え切れずにエアコンの前で眠ってしまうから汗が冷えて風邪をひいてしまう。ここの夜は本当に悪夢だよ。

そして昼も悪夢なんだ。今日はうちの隣で4人の若者がガソリンを売っていただけでクルド人民兵ペシュメルガに殺されたんだ。なぜって?販売禁止だって言ったのに、売るのを止めなかったからだって!僕らは彼らの靴とガソリン缶が血だらけになって通りに放置されていたのを見たよ。ここでは命がとても安くなっている。犬の命、羊の命のほうがむしろイラク人の命より高くなっているんだ。

今のイラクは完全に変わってしまったと言わなければならない。今日のイラクは君がかつて訪れたイラクのようではないんだ。今のイラクは人間のための国ではない。人殺し、ろくでなし、盗賊のための国だ。今のイラクでいい人なんかほとんど見つけられない。ごくわずか、一握りしかいない。今のイラク人は殺人者であり悪魔の息子と言わなければならない。こんなイラクを見ることになるとは、決して思っていなかった。イラクは死んでしまった・・・」

取り急ぎ今日はここまで。サラマッドの絶望はかつてなく深い。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

August 15, 2007

8月15日NHK「日本の、これから」に出演します

以前もアンケートの件で紹介したNHKの討論番組、
「日本の、これから」第15回 “考えてみませんか? 憲法9条”
に出演しますのでお知らせします。

放送日時: 8月15日(水)
総合・午後7:30―8:45(75分) 生放送 〔前半〕
総合・午後10:00―11:29(89分) 生放送 〔後半〕
(※8:45―10:00はニュース この間は休憩になります)

出演者が多いようなのでどこまで話せるかわかりませんが、お時間のある方はぜひご覧ください。

| | Comments (59) | TrackBack (0)

August 11, 2007

イブラヒム来日中

JIM-NETのイラク人スタッフ、イブラヒム来日中!
スケジュールはJIM-NETのHPをご覧ください。

Imgp7479
ホテルイラーキーと化したPEACE ONオフィスで踊るイブラヒムとかおりん

| | Comments (89) | TrackBack (0)

August 08, 2007

Wattan プロデュース「戦場からPEACEを伝えよう!」

明日8月9日、友人の「わったん」主催のトークイベントに出演するのでお知らせします。

Wattan Produce

戦場からPEACEを伝えよう!

日時  8月9日(木曜日 ) 18:30開場:19:00開始~22:30

場所  Naked Loft (ネイキッドロフト)
新宿区百人町1-5-1百人町ビル1階
 (西武新宿駅北口1分 / JR新宿東口10分)
      TEL 03-3205-1556 / FAX 03-5287-9177
      Web Site http://www.loft-prj.co.jp/naked/
      携帯 site http://www.loft-prj.co.jp/i/naked
   
   営業  ¥1500(+1drinkから)
        ★LAST ORDER  FOOD&DRINK AM 1:30
        ★CLOSED AM 2:00

出演者:

相澤恭行(NPO法人 PEACE ON 代表)
 志葉 玲(フリージャーナリスト)
 渡邉修孝(フリーター)

Continue reading "Wattan プロデュース「戦場からPEACEを伝えよう!」"

| | Comments (719) | TrackBack (0)

August 01, 2007

「イラクの子どもたちは今」そして日本の私たちは…

発売中の「歴史地理教育8月号」の特集「子ども・暴力・平和の問題を考える」で、拙稿「イラクの子どもたちは今」が掲載されていますのでお知らせします。
Rekitiri2708

治安悪化により深刻な状況にさらされ続けているイラクの学校など教育現場の様子を中心に、子どもたち、教育関係者、そして現地スタッフの声など、ブログではとても書ききれない細部も出来るだけ紹介しました。ちなみに表紙と口絵の写真も以前私が撮影したものや現地スタッフ撮影のものが使われています。

国際社会の一員であるわたしたちが、これからイラクとどのように関わっていくのか問われている今、イラクの子どもたちに何ができるか、考える一助になれば幸いです。

ところで先達ての参院選では、久しぶりに自分の一票も生かされ、さらには与野党大逆転と、予想以上に痛快な結果ではあった。しかしこれは主に年金問題やどうしようもない閣僚連中に対する怒りの批判票が多く、前回の小泉劇場に酩酊した移り気な世論の反作用でもあるだろう。本来争点になるべきであった憲法問題はすっかり置き去りにされて、イラク戦争の総括や、これからのイラクとの関わりをどうするかなど、ほとんど聞かれなかったのは残念だ。

世界各国のイラクへの人道支援は2003年と比べると激減している。しかし逆にイラクでは現在全人口のおよそ3分の1もの人々が緊急援助を必要としているという危機的な状況なのだ。(BBCの参考記事

年金や閣僚不祥事など国内問題も大事だが、日本はこのイラクの惨状を生み出した戦争に深く加担して、政府はいまだに戦争は正しかったとのたまってはばからず、税金を使って空自による米兵の空のタクシーを続けている。この私たちの責任を忘れてしまっては、せっかくの参院与野党逆転劇も茶番に終わるだろう。やはりこれからが本番だ。

余談:参院選といえば、投票日サッカーアジアカップのイラク優勝もまた痛快だった。うちにはBSがないので深夜再放送での観戦だったけど、イラクチームの闘志にすっかり胸が熱くなって朝を迎えた。優勝となると祝砲の流れ弾がますます心配だが、今は心からみんなにおめでとうと言いたい。

| | Comments (3) | TrackBack (0)

« July 2007 | Main | September 2007 »