カーシム講演@東京、ありがとうございました!

4月2日のイベント、「イラクの空には何が見える?」にきてくださった皆様、どうもありがとうございました。参加者数は100名弱でした。2月のイラク人女医を招いての講演のとき同様、多くの外国人の方々の参加もあってよかったです。
PEACE ONの高瀬による司会の後、はじめ高遠さんからイラクの全体状況についての解説があり、続いてカーシムの報告に入りました。

*グーグルアースを使って、ラマーディの状況を話すカーシム
イラク戦争から4年。現在では「テロとの戦い」の最大拠点と名指しされ、米軍に包囲され続けているふるさとラマーディの町の様子を、ひとつひとつ丁寧に話してくれました。地図をクローズアップして、「かつて」そこにあった学校や病院などを指差しながら、人々がどのように爆撃され、狙撃され、誘拐され、そして殺されていったかを。彼は自らを、「ラマーディで最もラッキーな男」と紹介して報告を始めました。それはこうして今も生きてここに来て話ができているからなのでしょう。「話を聞いている皆さんにとっては信じがたいことかもしれませんが、あたりまえのように人が殺されていくのが私の町の現実であり日常なのです」と。
やがてその異常が日常と化したラマーディに暮す住民の一人である自身の体験を語ってくれました。彼がいかにして米軍に拘束され、囚人としてどのように扱われたのか、また、町の様子を綴った自身のブログによって、再度米軍に拘束されたときの様子はどうだったのか、そして、包囲攻撃の影響で交通事故にあった兄が、米軍の検問のせいで病院に間に合わず命を落としてしまったときのことまで、ふるさとの空が恐怖に染まってからの4年間の出来事を、詳しく説明してくれました。
増えていく死者数とその遺族達に比例して、周囲の多くが報復を誓い武装抵抗勢力に参加していくなか、高遠さんと立ち上げたファルージャ再建プロジェクトのことも話してくれました。「破壊ではなく再建を!」をモットーに、爆撃による被害を受けた学校再建に着手し、その雇用を生み出すことで報復への怒りを脱して「心の再建」をしていくというプロジェクト。家族が殺され、怒りの渦に支配されている友人達に、こうした非暴力のプロジェクトに参加してもらうことがいかに困難だったか、そして、同じように家族が殺されている自分自身にとっても、その意志を貫き通して、ここまで活動を続けることが、いかに艱難に満ちた闘いだったのか、これまでの苦悩や葛藤も含めて話してくれました。いまだ混乱のなかにある現状を見れば、成果はとても限られたものかもしれない、それでも、高遠さんをはじめ多くの仲間の励ましのおかげでここまで続けてきて、実際に武器を捨てて再建に汗を流してくるようになった友人もいるし、暴力による解決は決してなにも生み出せないと学ぶことが出来たと、プロジェクトの意義と活動によって生まれた信念を、力強く語ってくれました。
23日に来日してから、休む間もない全国講演行脚だったので、再会したときには表情に疲れも見えたようで少し心配しましたが、さすが連日の講演で鍛えられたのか実に要領よく話していて安心しました。後半にはずいぶんと熱も入り、とても時間が足りない様子でした。報告を終えて、会場からの質問にもひとつひとつ丁寧に答えてくれました。実は東京に来る直前、広島でラマーディから身内の訃報が届いたそうです。16歳になる従兄弟がイラク軍に連れ去られ、つい先日ゴミ捨て場で遺体が発見されたというのです。その直後にあって、重く悲しい事実を全身で受け止めたまま、彼は私たち周囲のスタッフへの気配りすら怠らず、自らの体験をしっかりと伝えるという使命を全うしてくれたのです。

イラクの希望が根こそぎにされていくなかでも、私にとっては、こんなイラクの友がいるということ自体が大いなる希望です。今回、一度は諦めかけたものの、多くの人々の協力によって、彼を日本に招きそして話しを聞くことが出来たことは、イラク復活を願う私たちにとって大いなる悦びです。彼の来日、全国の講演に協力してくださったみなさま、そしてカーシム、本当にありがとう。イラクの空を恐怖に染める手を引き離し、一歩一歩、たとえ小さな歩みでも、イラクの空に新しい虹をかけるため、明日からもまた共に歩んでいこうと思います。
*カーシム来日記念として彼のブログを編集したブックレットは、こちらから購入できます。


Comments
現実はまだ戦争中のイラク全土と隣国で耐えるイラク人難民支援が必要だ、と思いながら講演を聞いた。講演後立ち寄ったピースオンのコーナー。そこに置かれたパレスチナ刺繍のストールはシリアの難民キャンプのもの。昨年、私のパレスチナの里子はシリアの叔母さんの家に避難していたと手紙に書いてきた。母親は恐怖でずっと泣き叫んでいたそうだ。それで老齢で病身の父親と三人でシリアに向かったのだった。戦争の恐怖と肉親を目の前で失う悲しみや絶望と家族の離散を何度も経験し、親の世代のPTSDが深刻だと言う。シリアのおばさんも刺繍で生計を立てているかもと思いつつ帰宅。それにしても、イラク人が経験していることはパレスチナよりもっとひどい。イラクの悲しみはもっと深い。
Posted by: うだすみこ | April 11, 2007 at 01:04 PM
うだすみこさん、
講演に来てくださってありがとうございました。おっしゃる通り、イラク人避難民支援は急務であり、ただいま新しいプロジェクトの調査&企画中です。詳細は決まりしだいおしらせしますので、今後ともご協力よろしくお願いします。都知事選の結果などにうなだれている暇などないと、気を入れなおしますね。
Posted by: YATCH | April 13, 2007 at 10:05 PM