« 断食修行記 其の壱 | Main | 断食修行記 其の参 »

December 14, 2006

断食修行記 其の弐

Imgp6897二日目。夜明け前の朝4時半起床で5時からお勤めが始まる。6時前、東の空が仄かに朱に染まりだすころには道場を出て、日蓮大聖人像、清澄寺、仏舎利塔などに御参りに出かける。ここ清澄山は日蓮が始めてお題目を唱え立教開宗したといわれる聖地であり、しかも日本で一番早く日の出が拝めるという実にありがたい所だ。凍てつく風が空きっ腹に応え、お題目を唱える声もかすれ気味になるが、ここでのこの夜明け前の凛として澄んだ空気に洗われることを必要としていた自分に気づく。お参りの最後、仏舎利塔を時計回りに螺旋状にのぼっていって、誕生仏立像の下で御来光を待つ。杉林の梢の谷間の彼方の水平線、雲の隙間からその光がこぼれだしたその刹那、両の眼窩にあたたかい息吹が注がれるように、幸福感で全身が満たされていく。いつもなら夜通し起きてでもいなければお目にかかれないこの日の出の時、このようなありがたい瞬間が毎朝繰り返されているということを忘れて生きている日常を省みる。

7時頃道場に戻り、夕方6時まで延々とお題目を唱えるお勤めが続く。もちろん断食修行なのでお昼になってもお昼休みがあるわけでもなく、3時になってもおやつが出てくるわけでもなく、ただひたすら座してウチワ太鼓を叩きナムミョーホーレンーゲーキョ~と繰り返すのみである。さすがに何も食物を摂っていないので寒さが身に応える。普段いかに食物によって体の内側から熱をとっていたかに気がつく。トイレの行き帰りにでも日なたを探して暖をとらないととてももたない。そして一日目とは全く形相を変えて襲い掛かる凄まじい空腹感。瞑想どころではなく食べ物のこと意外考えられなくなる。水も飲めない渇きがさらに身体と精神をじりじりと追い込んでいく。ふと、なんでこんなところに来てしまったんだろうと思い、明日も一日食えないことを考えると、これではとても持たないのではないかとどんどん弱気になっていって、声も出ず太鼓も叩けないほどに衰弱していく。いかに人間の身体が食に依存していることか。二度目だし、二日目は一番しんどいと覚悟はしていたものの、やはり断食は慣れない。聞くと毎月やっているお坊さんですら二日目の苦しさは慣れることがないという。

ただ、不思議なことに時折身体の奥からじわりじわりと力が湧き出てきて、気がつくと信じられないような大きな声でお題目を唱えている自分に気づく。そうなるとみるみるうちに力が漲り身体も温かくなり、気分も高揚してきて景気よくウチワ太鼓を打ち鳴らしている。しばらくするとまた力なく沈んでしまうのだが、こうした波を繰り返していく。そして南無妙法蓮華経のお題目も、時には受難曲のように悲壮感が漂ったり、陽気で小気味よいレゲエ調にすら聴こえてきたり、また時には呪術的な怪しさを秘めて、そして時にはオーケストラのように生命を賛美する荘厳な響きをもったりと、実に曲調豊かでさながら歌劇のように変化していくのだ。

午後6時、計13時間にも及ぶお勤めがようやく終了すると、起きていても腹が減るだけなのでストーブで暖をとって午後7時過ぎには早々と布団に入る。しかし夢の中でもやはり断食中だったり、とかくに食べ物のことばかりが巡りて何度も夜中に目が覚めてしまう。

Imgp6903三日目。やはり早朝4時半に起きて二日目と全く同じスケジュールでお勤めが始まる。身体が断食状態に慣れてきたのだろうか、不思議と二日目よりは楽に感じる。また、明日こそは食べられるという希望があるからだろうか、精神的にもいくらか余裕が出てきて、食べ物以外のことにも色々と心をめぐらせることが出来た。ただ、のどの渇きは耐え難く、トイレに行くたびに口をゆすいでうがいをした。食道まで水を落とせないのは切なかったが、うがいするだけで全身に気が漲り意識が冴え驚くほど苦しみが癒される。(つづく)

|

« 断食修行記 其の壱 | Main | 断食修行記 其の参 »

Comments

三日間の断食ですか。
仕上げがが楽しみですね~
結局、何キロ落とせたのでしょうか?

Posted by: wattan. | December 15, 2006 at 12:55 AM

wattan,

ダイエットが目的ではないので、体重は量ってないのですよ。もちろん少しは減るのでしょうけど、断食後は何を食べてもうまくてついつい食べ過ぎてしまうので、気をつけないと反動で逆に太ってしまうそうです。ダイエット目的ならおすすめできませんねえ。

Posted by: YATCH | December 15, 2006 at 08:08 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/44849/13068489

Listed below are links to weblogs that reference 断食修行記 其の弐:

« 断食修行記 其の壱 | Main | 断食修行記 其の参 »