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December 24, 2006

断食修行記 其の六

昨日のイベントで今年の講演は全て終了。みなさま今年も一年大変お世話になりました。さて、一時中断していた断食修行記再開です。こんな長いレポート一体誰が読んでくれているんだろうとも思いながら、今回は偶然クリスマスにちなんだような内容にもなっているのであえて本日掲載します。

*ここから「断食修行記 其の六」

七日目。三日間の完全断食、四日目の中食、そして五日目六日目再度の完全断食を経て、再び食をいただくときがやってきた。一度中食を挟んでからの二日間の断食はとても楽だったが、七日目の朝には一気に空腹感に襲われていたので、中食の時同様に食事の準備で果物などを切っている最中、しゃぶりつきたい衝動を抑えるので大変だった。早朝の御参りを済ませて、7時過ぎにはいよいよ食をいただく。まずは水、そして何杯もの梅湯と生野菜で体内を流すというスケジュール、そして昼、夜のメニューも、若干量が増えているだけで四日目の中食の時とほぼ同じ。やはり中食時同様、こんなにも食べることがありがたく愉しいものなのかという感動と、温泉上がりのような温かさに全身が包まれる。

Imgp6918この日は障子の張替えなどを手伝って、三日ぶりのお風呂もありがたくいただいた。お上人、安寿さんたちと共に、食事の偈を唱えてからいただくという規律はとても新鮮であり、ありがたいえびす顔をした道場主のお上人さまの秋田弁からこぼれる含蓄のある冗談と、安寿さんたちとの絶妙なぼけとつっこみが滑稽で笑いが絶えない。イラクなどアラブ社会で大家族に囲まれて食事をご馳走になるときも感じることだが、やはり大勢で食卓を囲むと愉しく食事がさらに美味しくなるものだ。食事が美味しいということが幸せの尺度の一つであるとすれば、核家族化が進む社会というのはまさに不幸な社会でもあり、さらに家族が一つの食卓を囲まずに銘々ばらばら好き勝手に飯を食っているような家庭においてはその極みであろう。この社会が履き違えた自由と引き換えに失ったものの大きさに、自戒を込めて思いを馳せた。


Imgp6921八日目。12月8日は太平洋戦争開戦の日、そしてジョン・レノンの命日として有名だが、お釈迦様が悟りを開いたことを祝う成道会の日でもある。この臘八接心の断食修行も今日でおひらきとなる。朝のお勤め、そして御参りはいつも通り。昨日まで好天に恵まれほぼ毎朝拝むことの出来ていた御来光は、昨夜から雨が降り始め天候が崩れてきていて残念ながらお目にかかれなかった。しかしこの日は仏舎利塔まで安寿さんたちも杖をついて御参りにやってきて、この一週間、誰一人体調を崩すことなく無事断食が出来たことを皆で感謝して祈った。本当に有り難い8日間を過ごさせてもらったと思う。

仏舎利塔の階段を降りるとき、私は齢90になる安寿さんの手をひいてあげた。腰は直角に近く深く折れ曲がり、細く小さく、くしゃくしゃに縮んでしまったその身体を、安寿さんは右手に握り締めた杖でしっかりと支えながら、私はもう一方の掌をしっかりと繋いで、階段をひとつずつ、転ばないように、ゆっくりと降りていった。安寿さんの小さな躯体はとても軽いのだが、階段をひとつずつ降りていくたびに、彼女の90年の人生の重みが、高々三十路半ばの自分の掌に、ずしりずしりと響いてくるようだった。ふと安寿さんを見ると、その小さな身体が、30年前の女の子の友だちの姿に重なって見えた。カトリック幼稚園からの帰り道、私は毎日のようにその目の見えない友だちの手を繋いで、幼稚園からすぐ下の洋菓子屋の彼女の自宅まで送っていた。階段をひとつずつ、転ばないように。とても小さくて、風が吹いたら倒れてしまいそうなほど華奢な体つきの女の子だった。小学校に入ってから、しばらくその女の子とも会わなくなっていたが、ある日突然亡くなったことを聞かされた。当時は神様といえばキリスト様かマリア様だったので、私は彼女はマリア様のところに帰っていったんだと思うことにして、悲しい気持ちを抑えようとした。階段をひとつずつ、転ばないように、と。そして今、手を繋いでいっしょに階段を降りている安寿さん。先日彼女が仏舎利塔の前にただひとり立ち祈っていた姿を垣間見て、心を動かされたあの美しい祈りの姿と、30年前、無垢な盲の少女が手を合わせてマリア様に祈る姿が、その時私の心の中で完全にひとつになっていた。私は安寿さんの手をしっかりと握りしめ、この不思議な再会を心静かに祝っていた。

Imgp6924御参りが終わり、最後の食をいただく。成道会のお祝いということで、イサキの塩焼きという尾頭付きである。本当に有り難い。断食後一週間は食事に気をつけるように、特に油ものを控えるよう、また、反動による食べすぎに注意するよう忠告を受ける。食後に部屋を掃除して布団を片付け、皆で感謝の辞を述べ合いご本尊に挨拶を済ませて、9時半過ぎには下山して娑婆に戻った。(断食修行記はこれで終了。あとは断食後感想に続きます)

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Comments

吟遊詩人の名曲を思い出して、こっちも涙しそうに。

シンポジウムに行かれず、すみませんでした。

良いクリスマスをお迎えください。

Posted by: kanoh | December 24, 2006 at 08:04 PM

kanohさん、どうもお久しぶりです。

修行記読んでくれて、さらに自分の昔の歌の原型にまで気が付いてくれてほんと感激です。こうして、亡くなった命も、心の中で生き続けているんだなあって思います。

それではよいお年をお迎えください。

Posted by: YATCH | December 28, 2006 at 05:50 PM

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