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November 25, 2006

バグダード外出禁止令

アダミヤの友人からの連絡が途絶えたままだ。200人以上が死亡するという大惨事となった23日サドルシティーで起きた連続自動車爆弾テロからバグダード市内では外出禁止令が出ているから、ネットカフェにすら行けないのだろう。たった今サラマッドから届いたメールによると、バグダードにいる弟からの情報では、あの事件の20分後にはスンナ派居住地区アダミヤに大量のミサイルが打ち込まれ、アブ・ハニーファモスクも大きなダメージを受け、今日はアダミヤだけでなく隣のシーア派居住地域カズミヤでも銃撃戦になったという。彼の家族がいるドーラ地区含め、市内ほとんどの地域で住民が武装してシーア派民兵マハディ軍の襲撃に備えているという。今回の事件は宗派間抗争が激化するきっかけとなった今年2月のサマッラのアスカリ聖廟爆破事件同様か、それ以上の混乱をもたらすだろうとのことだ。

ちなみに事件のちょっと前には、先達てのサッダームの死刑判決について、また、ラムズフェルド更迭についてなどのバグダード市民の意見なども送られてきていた。この新たな悪夢の到来を前にして、どのタイミングで紹介するべきか迷っていたが、どうにも今落ち着かず他のことが手につかないので今ここで簡単にまとめて書き連ねてみると、「ラムズフェルドの更迭は遅すぎ。アブグレイブのときにすべきだった。しかし誰に代わろうが米軍がイラクから出て行かない限り状況はよくならない。そしてイラク政府も全て変わるべきだ・・・」等々。そして、「サッダームには公正な裁判を望む。アメリカの茶番裁判による死刑は認めない。(シーア派の一人だけ死刑は当然という意見)彼が死刑ならブッシュもラムズフェルドもそして現イラク政府閣僚全員そうなるべき。むしろサッダームを解放して大統領に戻してあげたい・・・」等々。ただし米国中間選挙にはほとんど関心を示していなかったそうだ。アメリカのゲームに引っ掻き回され続けた挙句、疲れ果ててもはやイラクの未来に完全に希望を失っているのだという。その反面、過去への郷愁からかサッダーム裁判には非常に大きな関心を示していたという。

しかし、今はそれすら考えているどころではないだろう。いつ解かれるかすらわからない外出禁止令の中、上空を飛び交うミサイルの音を聞きながら、多くの家族が見えない未来に怯えている。

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November 10, 2006

掻き消される声&11月12日イベントのお知らせ

サッダームからブッシュ、そしてラムズフェルドと、ここのところ紙面は久しぶりにイラク関連問題で賑やかになってきてはいるものの、やはり権力者とそれに群がる連中の声ばかりが喧しくて、イラク国内の市井の民の声は相変わらず掻き消されている。今このブログで紹介したところで連中のでかい声にはとてもかなったものではないが、だからといって書かなければその声が存在しなかったことになってしまうので、性懲りもなくいくつか紹介しよう。

Day_time_
*写真は日中だが人気のない今年8月のバグダード市内の様子。サラマッド撮影

まずはイラク北部モースルに避難していた現地スタッフのサラマッドの父親が先日数ヶ月ぶりにバグダードに戻ったときの話から。

陸路バグダードまであと30~40分あたりのスンナ派地域で、ある武装グループの検問があり、彼らはタクシーの乗客全員にアザーン(イスラームにおける礼拝への呼びかけ)を唱えてみよと言う。父は即座にこれはある種のテストだと悟った。なぜならスンナ派とシーア派ではアザーンの唱句に若干の違いがあり、それでどちらの宗派かがわかるからだ。父親はスンナ派なのでそこは問題なく通過できたが、もしシーア派だったら殺されていたかもしれないという。その辺りにはイラク国外からも多く戦士が入ってきているらしい。また、バグダードからもう5分という地域に入ると、今度は警察による検問が。しかしよく見ると全員がシーア派民兵のマハディ軍だったようで、さらにはタクシーがモースルのナンバーだということでスンナ派の人間が乗っていると断定され即座に殺されそうになったという。命乞いの結果、乗客同士で500ドルをかき集め彼らに渡すことによって何とか解放されたそうだ。これは現在イラク、特にバグダードの治安悪化の大きな原因になっている民兵が、結局は金目当ての強盗に過ぎないという例でもあるが、バグダード市内はシーア派民兵が猛威を振るっているものの、その周囲はスンナ派の戦士たちが包囲しているという最近耳にした噂にも一致する。

そしてサラマッドの弟からバグダード市内について。数日前、首相マリキはなぜかサドルシティーの道路封鎖を解いた。ドーラやアダミヤなど他の地域は完全封鎖されたままなのに、マハディ軍の拠点でもあるサドルシティーを開放するとは何事かと各方面から非難轟々。内閣の中からも、これでもし何かあれば全てマリキの責任だと不協和音が広がっている。巷ではマリキが最近アメリカによって首を挿げ替えさせられるのでないかと恐れていて、シーア派民兵の支持固めをしているのでないかとの噂だ。そして案の定マハディ軍は暴れだし、数日前も米軍によって完全に封鎖されているはずのサラマッドの実家のあるドーラ地区に侵入したようだ。ドーラの自警団が迎え撃ち何とか追い出したものの、なんとそのとき米軍は戦うどころか隠れていたという。その後マハディ軍はアダミヤにも進入し市民を16人殺害したので、政府への非難は高まる一方だそうだ。サドルシティーを開放してから拷問殺害もまたさらに増えて連日100体以上の死体が発見されているという。米軍はもはや市内の治安を維持するというモチベーションなど完全に失っているように見える。

そして最後はそのアダミヤに住む友人から昨日届いたメールから、一部省略&編集したものを取り急ぎ紹介。

「民兵による宗派間の暴力と占領によって、ここイラクでの生活は不可能になった。毎日、近所の通りでは民兵によって殺害された死体を目にする。そして米兵はそれをただ見ているだけだ。彼らはこの暴力を止めるために何一つしていない。それどころか連日家宅捜索で家屋を急襲し多くの無実の市民を捕らえている。シーア派地域に住んでいた二人の兄弟(スンナ派)は(民兵による暴力を恐れ)家を出て今新しい地域に家を借りて住んでいる。米兵は民兵を捕まえても次の日には解放したりする。死体の周りには野良犬が群がって遺体を食い尽くしている。米兵もイラク警察も死体を放置しているので子どもたちすら目にしてしまう。自分の息子も、学校の近所で目の前で無実の市民が民兵に殺されるのを目にしてしまった・・・。

このひどい生活のせいで、イラク人はみんな自分自身を爆破したいとすら思っている。イラクはもはや以前のようではなく、笑顔を見かけるのはとても困難になってしまった。誰もがみな悲しみに包まれている・・・。

数日前から新しい計画が実行されているようだ。ここアダミヤなどのスンナ派地域、そしてサドルシティーなどのシーア派地域を中心にして、迫撃弾による無差別攻撃が続いている。宗派間憎悪さらに煽り立て、イラク全体に内戦を引き起こそうとしているようだ。連日15発以上の迫撃弾が打ち込まれ、何人も殺されたり傷ついたり、家屋や車両が破壊されたりしている。

何人かのイラク人の間では、こうしたことはすべて米国家情報長官ネグロポンテがイラクに(米国大使として)来てから起こっているという。以前彼がエル・サルバドルで暗殺部隊を率いて行ったことと同じことを、今ここイラクでも行っているのだと・・。

今、私と家族は、この地域の他の多くの家族と同じように、家の中で身を隠している。いつ迫撃弾の攻撃を受けるかわからないし、多くの人が被弾して殺されているから。

どうかこの話を、君の友人たちみんなに伝えてほしい。」

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以下、イベントのお知らせです。PEACE ONのHPのスケジュール欄でも紹介していましたが、期日が明後日に迫りましたのでこのブログでも宣伝します。私も30分ほどですがイラク現地報告をしますのでよろしくお願いします。前売り券希望の方は事務局までご連絡ください。


劣化ウラン兵器禁止を求める国際行動デー

日時:11月12日(日)
    13:30~17:00(開場13:00)
場所:東京都 文京区民センター2階ホール
Speakers:嘉指信雄(ICBUWアジア太平洋コーディネータ、NODUヒロシマ・プロジェクト代表)・振津かつみ(ICBUW評議員、ヒバク反対キャンペーン)・豊田直己(写真家)・清水仁(映像ジャーナリスト)・相澤恭行・鎌仲ひとみ(映画監督)・内藤雅義(弁護士)・山崎久隆(劣化ウラン研究会代表)
参加費:1000円/前売800円
主催:劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワーク


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サッダーム死刑判決に想う

サッダーム・フセイン死刑判決、アメリカ中間選挙での民主党勝利、ラムズフェルドの更迭と、今週は立て続けにイラク関連問題が新聞の一面を賑わせた一週間だった。一日平均100人以上ものイラクの人々が殺されていくという深刻な情況に反比例して、イラク関連報道は減少する一方だったので、久しぶりに新聞一面を飾ったサッダームの姿に、ある種郷愁にすら似た奇妙な感慨を覚えてしまった。死刑判決自体は誰もが予想していたことであろうし、結果的に効果はなかったにせよ、アメリカ中間選挙にあわせてブッシュ政権がイラク戦争の成果を示すための政治的意図が介在したひとつの見世物であることも間違いないであろう。

ところでEU諸国などは原則論からこぞって死刑の反対を訴えている。私も死刑、戦争を含め、あらゆる殺人に反対の立場から今回のサッダームの死刑判決には反対ではあるが、そもそもこの違法な占領下で設置された法廷そのものが茶番であり無効であると考えているので、ここで死刑判決に反対を訴えることは逆にこの裁判自体を合法と認めることになってしまうのではないだろうかとも思う。メディアはここで今一度この裁判そのものの合法性を問い直すべきではないだろうか。まあ開戦の理由である大量破壊兵器保有疑惑を米政府の広報機関よろしく一大キャンペーンを張って報道しておいて、いざそれが実は存在しなかったとわかってもこれまでの自らの報道を反省はおろかろくすっぽ検証すらしていないわけだから、今回もまたむべなるかな。

それにしてもアメリカは大変な茶番劇を拵えてしまったものだと思う。アラブ諸国ではこの裁判の様子をテレビで観ることが出来るが、いくらアメリカにとって都合の悪い発言などをカットしたところで、サッダームの姿がブラウン管に映し出されるたびに、溜飲を下げる人間以上に、逆にサッダーム支持者が増えて反米感情も高まっていっているように感じていた。悪化する一方のイラク情勢を嘆き、「サッダーム時代のほうがよかった」という懐古の声が現地では急速に増えているということはこれまでもたびたび紹介してきたが、前回のイラク北部&シリア、ヨルダンの旅で友人などから話を聞く限りそれは変わらず、むしろさらに高まってきているという印象を受けた。そういえば、サッダームの小説が日本での翻訳出版以外では発禁になっていること自体も彼の影響力の大きさを物語っている。

報道では紋切り型にサッダームの死刑判決について歓喜するシーア派と反対するスンナ派の様子を切り取って伝えているが、私の友人のイラク人の一人はシーア派なのに堂々とサッダームを擁護しているし、実際の住民感情はシーア、スンナで割り切れるほど決して単純ではない。皮肉なことに、サッダームの過去の悪業も、それをはるかに凌ぐ悪業によって捕らえられ裁かれている結果相対的に希釈されてしまい、また、ただ一人毅然として立ち向かうサッダームという一人の人間の姿が、それを見る人間に新たな同情の念すら生み出しているようだ。

ここでもしサッダームの死刑が執行されたら、イラクの混乱は取り返しのつかない情況に陥るのではないか。イラクの安定を考えれば、これは執行が不可能な判決ではないか思う。しかし執行しなければそれはそれでまた不安定要素のひとつでもあるというジレンマ。今日のイラクの混乱の元凶は米軍の存在そのものなのだが、ここまで治安が悪化した以上、即時撤退もまた出来ないというジレンマと非常によく似ている。

さて、アメリカ中間選挙の結果を見る限り、アメリカ国民の多くがようやくイラク戦争の現実に気づいたのかもしれない。更迭されたラムズフェルドは「始めはよかったが・・・」と言うが、彼が最も恍惚としたであろうあの首都陥落以降が本当の意味での戦争の恐ろしさなのだ。ベネズエラの大統領チャベスも言うとおり、ラムズフェルドがやめるならブッシュをはじめ閣僚全員が辞職すべきだし、人道に対する罪でサッダームを裁くならば、65万以上とも言われるイラクの人民と、2800人以上という9・11の犠牲者にも匹敵する米兵を殺害したブッシュもやはり同様に人道に対する罪で裁かれなければならない。違法な先制攻撃を支持し、共に占領という犯罪に手を染めた共犯者である前日本国首相小泉、そして彼を結果的に支えてきた私たち日本国民と共に。

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