再びダマスカス
ラマダーン(断食月)直前のダマスカス。星や三日月形をしたラマダーン用の光る飾りものに混じって、ヒズボッラーの黄色い旗とナスラッラー党首の写真が賑やかに新たな彩りを加えている。
旧市街のスーク・ハミディーエの喧騒をかき分け、いつもの骨董品屋のユースフさんのところへ。レバノンでの戦争のときは観光客も減って商売上がったりだったそうな。アンマンでもここダマスカスでも、タクシードライバーや露店商のオヤジなどに聞くと皆ヒズボッラー支持一色だったが、ユースフさんなど英語の話せるインテリになると複雑なようだ。イスラエルに対する抵抗は支持できても、あれだけの市民の犠牲はやはり到底支持できないという。ちなみに当時大挙押し寄せていたレバノンからの避難民のほとんどはもう帰国しただろうが、イラクからの避難民はヨルダン同様増え続けていて、やはり来るのはお金持ちが多いらしく皆土地や家を買っていくので不動産価格が急騰しているそうだ。
また、イラクから逃れてきたというパレスチナ難民についても聞いてみた。昨年、イラクに住むパレスチナ難民が迫害を受けヨルダン国境まで逃れてきたものの、ヨルダン政府が受け入れを拒否したためしばらく国境で行く当てもなく途方にくれていたところ、シリア政府が彼らを受け入れたと聞いていたので、そのパレスチナ難民たちは今どうしているのだろうと気になっていたからだ。
サッダーム政権時代は一定の保護を受けていたパレスチナ難民も、政権崩壊後は逆に厳しい立場に追いこまれていた。住んでいたアパートを追い出され、キャンプ生活を余儀なくされていた人々もいた。PEACE ONも支援で関わっていたバグダードのアルバラディヤード地区のパレスチナ難民キャンプを管理運営していたハイファクラブは、パレスチナ人の友人の話によると、2004年秋にガセ情報から米軍のがさ入れと攻撃を食らってマネージャーは国外に脱出し組織はほとんど機能していない。彼らにとって駆け込み寺のような存在だったはずのハイファクラブがなくなり、バグダードの治安悪化は猖蹶を極め、命からがらたどり着いたヨルダン国境で運の尽きかと思いきや、そこは一神教信者には怒られるかも知れぬが捨てる神あれば拾う神ありか、シリア政府が助け舟を出したというわけだ。
きっとダマスカス周辺にも来ているだろうから、行って様子を聞いてみようと思っていたが、どうやら北部のハッサケのキャンプにいるらしい。ハッサケといえば、今回クルディスタンに行くために使ったトルコ迂回ルートの途中、シリアの果てカーミシュリーの一歩手前ではないか。日程的に長居は出来なかったとしても、ちょっと寄って話を聞くことくらいは出来たなあと調査不足を反省。同じくパレスチナ人のユースフさんを通して、今後はより密にパレスチナ難民のことを聞いていこうと思う。
帰りにふと覗いた露店商で野菜のみじん切り用カッターを購入。ホテル近くのコーヒーショップで水タバコを一服しているときに、自分のカメラがないことに気づいた。ユースフさんのところ電話してもないから、おそらくあの露店商で置き忘れたか掏られたのだろう。もうないだろうなと思いつつ戻ってみると、もう露店は片付いていたものの、売り場にいたおじさんがニコニコとカメラを持って立っていた。あのあとすぐカメラに気づき私を追いかけてみたがもう見えなくなっていて、その後警察に注意され店をたたんだが、きっと戻ってくるだろうとありがたいことに待っていてくれていたという。すばらしい。またひとつシリアが好きになった。アンマンのがめついタクシードライバーに疲れ果てていた心が一気に軽くなる。まったくこれだからアラブはやめられない。これがテロ支援国家とアメリカに名指しされる国に住む人の姿である。
予定していたアラブ雑貨の商談等は順調。夜と朝方はずいぶん涼しくなってきた。シリア滞在も残すところあと二日だ。
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Comments
関係者は(たぶん)知っている。
YATCHの忘れ物ちぇっくは同行者の務めだと。
かくいうわたしもかなりうっかりやですけど
人の思いやりを知ることに繋がるから
うっかりも悪いことばかりじゃないですね。
素敵な民族品とお話をいっぱい抱えて無事に
お戻りください。
Posted by: 千代 | September 19, 2006 02:24 PM
ムスリムの社会では置き引きやスリは殆どありえないと聞いています。忘れ物をしても大抵戻ってくるのは私も経験しました。12年前当時の新製品SONYハンディカムをカイロで忘れた友達、バスの運転手がちゃんと保管していたのです。私なんかホテルの洗面所でネックレスをはずして顔や首を洗い、すっかり忘れてバスに乗り込み、観光して帰って来てから気がつき、ボーゼン。コンシェルジェの所へ駆けつけたら、ちゃんとありました。向こうの忘れ物帳にサイン+拇印を押して、戻ってきたのー。嬉しくて涙が・・・。以前トロントで親類がホテルロビーで式の打ち合わせ中、そばに置いていたカメラを見事盗まれて結局戻ってこなかったこと、ミラノ中央駅で口にナイフを入れられて財布とパスポートを盗られた上、ぼこぼこにされた悲惨な出張者、色々思い出しても、アラブ社会は素晴らしい。戦争や紛争がなければ、欧米資本主義の強欲な利権の争いさえなければ、彼らの社会はどんなに・・・(絶句)。
勿論トルコはアラブじゃないですから!!
Posted by: うだすみこ | September 19, 2006 07:42 PM
実は最後の最後にもやらかしてしまいました。ただこれも戻ってくる可能性はあるので、再び信じて待っていますが・・・。
Posted by: YATCH | September 23, 2006 03:59 AM