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June 20, 2006

空は残して陸自撤退

日本政府はイラク南部サマーワからの陸自撤退を決定した。新聞社からの電話取材も受けたので、そのままブログに思うところを書こうとしたら、サマーワから避難したイラク人の友人のことをはじめ、書きたいことの多くはすでに事務局高瀬に先を越されて書かれてしまっていた。(PEACE ON DAYS参照)同じことを書いてももったいないので、以下補足のつもりで。

以下PEACE ON DAYSより;
>サマーワは比較的安定しているから、イラクに治安維持の権限が委譲されるという。サマーワ出身のスンニ派のわたしの友人は、シーア派のバドル旅団から脅迫状を受けとってイラク国外に避難したというのに。マリキさん、サマーワは前と比べてはるかに治安が悪化しているはずよ、なぜ?

比較的安定しているというのは「他の地域と比較して」という意味だろうが、ここ最近も書いてきたように、バグダードやラマーディやバスラなどその「他の地域」というのがこれまた以前と比較すると相当に治安が悪化している。おそらく、新政府も出来てほら復興プロセスがうまくいるでしょうとアピールするためにと、無理やり権限を委譲したのだろう。確かに以前はそれなりに治安がよかったという理由でサマーワが陸自の駐留先に選ばれたのは間違いないが、派遣当時から私は「危ないから行くなではなく、もともと危なくなかった地域を危なくするから行くな」と主張してきた。(2004年1月20日WPN記者会見での発言要旨

もちろん自衛隊だけが原因ではないが、サマーワの治安が悪化してきたことの大きな要因として、外国軍の駐留がある。対陸自を含めいわゆる抵抗勢力の攻撃が激化して、ついには夜間外出禁止令が出されるなど、とうの昔からとても日本政府が主張してきた「非戦闘地域」とは呼べなくなってきていた。「イラク復興支援」の名のもとに、つまりイラク人を助けに行っているはずが、自衛隊という武装勢力の存在自体が原因になって、結果的に逆にイラク人の命を危険にさらしてしまっているのだ。

以下再びPEACE ON DAYSから;
>治安権限委譲をもって、治安担当でなく「復興支援」をしているはずの自衛隊が撤退するというのも、おかしな話。もちろんわたしも、自衛隊は一刻も早くイラクから撤退してほしい、と願っている。とはいえ、あまりにも筋が通らないんじゃなくて?
今のままではサマーワの住民は、「日本軍はほとんど生活を改善してくれなかった、そのうえ日本企業も来ないまま撤収なの?」なんて思っていることでしょう。

2003年10月イラクで活動していた頃は、自衛隊が来るなんてしらない人がほとんどだった。2004年の3月には、「日本のことは大好きだから信用している。他の軍隊とは違うはずだ」という意見、自衛隊というより日本そのものに対する信頼感と、「次に企業が来るんだろ?」といった期待、また「なんでアメリカと一緒に来るんだ?」という嫌悪感が交錯していた。そしてついには同年4月の邦人人質事件での犯行グループによる自衛隊撤退要求によって、彼ら抵抗勢力にとっては、自衛隊は完全に占領軍と同じ敵とみなされていることが明らかになり、同年10月同じく自衛隊撤退要求の末に米国旗の前で殺害された香田さんのケースに至っては、もはや日本は完全にアメリカと同一であるという強烈なメッセージを突きつけられてしまった。

いくらイラク市民へのアンケートなどで自衛隊の支持が高かったとは言っても、それだけでこの自衛隊派遣を評価するのはあまりにも早計すぎる。武器を取って抵抗している人々からすれば、日本はもはや完全に敵国扱いである。今後日本人がイラクのみならず海外において香田さん同様の被害にあうリスクは格段に増しているのだ。

その後さらにイラクの治安悪化は猖蹶を極め、かつてはありえなかったいわゆる宗派対立まで発展していくと、イラクの友人を通して自衛隊駐留についての意見を求めても、毎日の命のことで精一杯で、それどころではないと突き放されることが多くなっていった。確かに日本人の自衛隊イラク派遣への関心はもっぱら国内ニュースとしての関心でしかなく、イラクの人々からするとどうにも的外れなものが多かっただろうと思う。そういう私も今回の日記を含めやはり少しでも関心を持ってもらおうと、日本人への潜在的影響などと絡めて伝えることが多い。実際には今現在も各地で状況は悪化していて、陸自撤退などの他に伝えるべきことは山ほどあるのだが・・・。

またまたPEACE ON DAYSから;
>そしてもっと嘆くべきは、陸自は撤退しても、空自はさらに拡大して「復興支援」でない米軍の後方支援をつづけるということ。イサムさんも講演で、「陸軍だけでなく空軍も、日本軍を撤退させてください」と促してらっしゃった。日本びいきのイラクの皆さんがこれ以上もう日本をキライにならないために、陸海空すべての自衛隊の撤収を、唱えつづけていかなければいけないと思う。

昨年来日したイラク人スタッフのサラマッドも、日本人が今できることは何か?という問いに対して、

>「どうかイラクのことを忘れないでほしい。世界から見捨てられているとかんじることが、イラク人にとってもっともつらいことだから」

の他にもうひとつ、「自衛隊を撤退させてほしい」ともあった。以前は彼も「みんな日本人のことは大好きだからまあ大丈夫だよ」と言っていたものだが、さすがにあまりの状況悪化を受けて、「全ての混乱の元凶は、暴力による解決しか頼ってこなかった米軍を始めとする占領軍であり、この占領軍の撤退以外に改善はありえない。そして、大きな影響力をもつ日本からも軍隊がイラクに駐留していることによって、その占領が正当化されてしまっているんだ。米軍を孤立させこの占領そのものをやめさせるためにも、まずは大好きな日本からその軍隊を撤退させ、この占領に加担するのをやめてほしい」とのメッセージを残していった。

結局日本企業へのバトンも渡せないまま陸自が撤退し、しかも空自が残りあからさまな米軍支援を続けることになれば、多くのイラク人の目には「結局何しに来たんだ。電気をはじめインフラは何一つ改善されていないのに。イラクのためではなく、やはりアメリカのために来ていたのではないか」とも写りかねない。抵抗勢力への印象はもう取り返しがつかないかもしれないが、このまま空自が米軍支援を続けることによって、イラクの一般市民が抱く印象すら、さらに悪くなってしまう可能性もある

これから自衛隊をバンバン海外に出していきたい輩にとっては、これまで延べ5千5百人もの隊員が事実上の戦時派遣を体験したわけであるから、このイラク派遣は最高の訓練になったとほくそ笑んでいることだろう。しかしその陰で、イラクの市民が本当に何を望んでいるのかということや、日本の市民が将来被るだろう危険は驚異的に増大しているという現実にはお構いなしだ。少しでもリスクを減らすためには、やはり空自も含めての撤退がどうしても必要だと思う。

しかしこれまで市民の力で陸自撤退を実現できなかったのも事実。さてこれからどうやっていくか、頭の痛い問題は絶えないが、小さくとも出来ることを続けてイラクの友との絆を繋ぎとめ、お互いに知恵を絞って考え行動し続けるしか道はない。

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Comments

イラク派遣で気になることと言えば、劣化ウランの被害です。この被害が表面化すれば(実際にもう出ているという話もあり。あってむしろ当然と言わざるを得ない)、「訓練」も何もあったものではないですが。

イラクでの劣化ウランの被害の実態については、次のサイトが参考になります。

http://www.jca.apc.org/stopUSwar/UMRC/umrc.htm

Posted by: 恭子 | June 21, 2006 at 12:57 AM

ラシードさんの講演を思い出しました。
・陸自だけでなく航空自衛隊も撤退させてほしい
・医薬品のために募金をしてほしい
・武力ではなく素晴らしい技術を届けてほしい
というようなことをおっしゃってました。

スタディーツアー実現の日が遠のく感じがしてなりません。

Posted by: peaceforearth | June 21, 2006 at 11:14 PM

20032003(=2003年3月20日)
米英軍によりイラク攻撃が開始された日。
20062006は小泉の陸自撤退決定の日。
じゃ、
米英軍撤退は20072007?
まるでまさに人をおちょくったどこかのスパイ映画ですね。

民主主義も自由も豊かな社会も虚構。
米軍は日本からだって永遠に撤退しない。
世界に米軍基地を作り続ける。
世界を守るため?
敵を作り出してテロ事件をあちこち起こし・・・
(それじゃオウムと変わらない・・・)。
彼らが作り出す狂った地獄に
殺戮を止められず何も出来ずに見続けると言う地獄にもう堪えられそうにない・・・・。

Posted by: うだすみこ | June 22, 2006 at 01:13 AM

恭子さん、

ウラン兵器汚染の可能性を考えると確かに訓練どころの話ではなくなりますよね。もちろんこの問題は短期滞在で帰る自衛隊員に影響しているならば、その地で生活しているイラクの人々への影響は相当深刻ですが。

peaceforearthさん、

空自はまさに米軍支援ですもんね。今日も「自衛隊撤退ですね!」って割と喜んでいた方がいたので、空自の話したらびっくりしてました。やっぱり知らない人は多いと思います。

スタディーツアー、せめて近隣諸国は遠のかないようにしないとですね。

うだすみこさん、

なるほど、せめて20072007に米軍が撤退するというプランだけでも発表してくれたら少しは変わるかもしれません。

イラク新政府のルバイエ国家安全保障顧問もワシントンポストに寄稿し、今イラク人は多国籍軍のことを解放者ではなく占領者と見ていると認めていて、撤退は治安改善に役立つと書いています。

http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/06/19/AR2006061901237.html

Posted by: YATCH | June 23, 2006 at 01:54 AM

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» イサム報告会ぶじ終了、そして陸自撤退のニュース [PEACE ON DAYS]
1つ前の記事でおしらせした「イラク人カメラマンは見た!イサム・ラシードさん緊急報告会~映像が語るイラク市民の悲劇~」は、200名を超える参加者にお集まりいただき、大盛況のうちに終えることができました。どうもありがとうございました。 わたしはスタッフとしてちょこまか動いていたため、イサムさんのお話をじっくりとお聞きすることはできなかったのだけど、満員の会場で皆さんが息を呑んで、命懸けで撮られた映像に見入ったり魂のこもった声にじっと耳をうずめたりしているのが、とてもよくつたわってきた。イサム自身も... [Read More]

Tracked on June 21, 2006 at 12:44 AM

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