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May 14, 2006

四捨五入して不惑の母の日

総会直前で立て込んでいたところ、さらに追い討ちをかけるように原稿など諸々の締め切りが重なってしまい、ろくに更新も出来ないうちに気が付くとまた年をひとつとってしまった。きっともういくら年をとりたくてもとれなくなってしまう刹那までこんな調子なのかもしれない。

さて年をとるといえば5月3日の憲法記念日はいまだフランスでふるさとイラクを想っているわが友の誕生日でもあった。おめでとうのメールの返事には、「覚えてくれていて嬉しいよ。僕の家族は忘れていたんだ。でもいいんだ。いま彼らはそれどころじゃあないから」と少し寂しげだ。

それもそうだろう。3月にイラク内務省が発動した「正義の秤作戦」-Operation Scales of Justice-がここ最近新しい段階に入ったようだ。ドーラ地区含むバグダード市内5つのエリアを新たに要注意地区に追加、総勢15万人ほどの治安部隊が投入され、バグダードを中心に各地に展開。中部サマッラなども完全に包囲され食料すら手に入らない状態だそうだ。友人は「犯罪者の正義作戦」だと憤る。民兵中心の治安部隊は各所で包囲作戦を開始、ろくに証拠もないままに容赦なく数百人規模で連行していき、やはりその後拷問の痕を残した遺体が数十人ほど見つかっているようで、やがて連中が家族の住むドーラ地区にもやってくるのは間違いないという。

近所の家族は次々と家を出て避難していて、行きつけの肉屋の友人は店内で兄と共に殺されてしまったというのだ。そこで家族は彼に尋ねたそうだ。ここを出て行くべきかと。以前からもうここは限界だ、郊外の祖父の住む地区に行こうと話し合ってはいたが、その地区はまたここ最近評判の悪いマハディ軍(サドル師の民兵)が幅を利かせているらしくとても不安である。かといってここドーラも間もなく包囲されてしまうだろう。いったいどうすればいい?と。

「でもいったいなんて答えりゃいいんだ?どっちがいいのか俺だってさっぱりわからない。どっちを勧めても、もし何かあったらと考えると、とても自分を許すことなんかできない。もうこんなことを考え続けなければならない毎日にいい加減疲れ果てている。妻も同じだ」と友は言う。

さらに、

「どうすればいいかおしえてくれ。お前に聞いたってわかんないのはわかってるけど、俺だってもうわかんないんだよ」と。

留まるにしても、出るにしても、せめて家族が離れずに一緒いてほしいと答えることしか出来なかった。

数日後の連絡で、結局モスクの責任者でもある父を残して家族は移動したと聞いた。友人も何度も言ったそうだが、やはり親父は離れるわけにはいかないと頑として譲らなかったそうだ。

この治安状況では、お互い無事を確かめに会いに行くことも困難だろう。

こんな中、友人の母は膝の病気が悪化して、このままいくと歩けなくなってしまうかもしれないという。どうも軟骨に異状があるようで、普通は治療がそんなに難しいものではないようだが、今のイラクでは医者も多くが国外に出ていたりして十分な医療体制にないのが問題だそうだ。友の願いを受けて、いつも世話になっているアンマンの薬剤師の友人に協力を求めたところ、レントゲン写真を送ってもらえばすぐにアンマンの医師に相談すると、快く返事をくれた。本当にありがたい。

ところで今日はもう母の日か。中東諸国では3月21日のようだが、母を想う気持ちは世界中どこでも同じだろう。そういえば以前はよく筆圧の高い読みにくい字で青臭い煩悶をくどくどと書き連ね手紙にしたためては母の日に送りつけていたことを思い出し、ふと興にまかせて簡単だが絵葉書を投函した。

お母さんへ

気仙沼は今頃名残の桜でしょうか。東京は新緑が賑やかです。こちらは相変わらずですが、ふと永らく無沙汰していた母の日の便りなんぞ書こうという興に乗ったので絵葉書で失礼ですが送ります。私も昨日で四捨五入すれば三十路から不惑への路に足を踏み入れました。しんどい世の中ですが、それでもこの世に生を受け、今日もおかげ様で生かされていることの有り難さを忘れずに生きていこうと思います。お母さんの健康にも感謝。ではまた。恭行

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Comments

総会お疲れ様でした。
本当に無事に終わって今年もひと段落ですね。
それでも、まだまだ問題山積ですがみんなで知恵を出し合って(お金はないけど)いきましょう。

ところで…
 「冷酒と親の小言はあとで効く」

これは、先だって御一緒した某居酒屋のトイレの壁に掛けられていた詩の一部です。若いときは何ということもなく聞き流していた親の指摘や小言も、自分が歳を経て様々な人々と交流していくなかで「そういえば」と思い出すこともあります。おそらく、そのような意味なのでしょう。

そして詩の最後は、このように締めくくられていました。

「さりとても墓に着物は着せられぬ」

Posted by: wattan. | May 15, 2006 at 10:48 PM

wattan.さん、賛助会員なのに総会では早くから来て手伝ってくれてありがとう。イベント準備でバタバタしてて返信遅れました。

>某居酒屋のトイレの壁に掛けられていた・・・

「親父の小言」ってやつですな。

>墓に着物は着せられぬ

うん。wattan.さんに言われるとまた沁みます。確かに親孝行も大事だけど、
ご先祖様の供養もちゃんとしなきゃなあ。

Posted by: YATCH | May 18, 2006 at 02:02 PM

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