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April 30, 2006

奪われるふるさと

総会資料作りでてんてこ舞いしていて、25日に届いていたイラクの友からのしらせを訳すのがすっかり遅れてしまった。しんどいが書こう。

アメリカの圧力でようやくジャファリが首相の座をマルキ氏に譲り、これでやっと新政府発足に向けて動き出したと報道はされていても、当然ながらバグダードの一般市民の状況がそうすぐ改善されるわけではない。市内で最も治安が悪くなっている地域のひとつ、ドーラ地区に住む友人によると、むしろなぜかさらに悪化していると言う。ひたひたと近づく死の足音。数件隣近所でまた誰かが殺されただの、もう日常茶飯事になっていたが、ついに真向かいに住む小学校の校長が何者かに誘拐され翌日彼の勤める学校の前で死体となって捨てられていたという。やはり拷問の痕を残して。友人とその家族は大変な衝撃を受けている。殺されたその校長の家族はもうすぐ家を引き払い故郷のラマーディに帰るらしく、彼の奥さんと大の親友である友人の母はお互いに別れを嘆き悲しんでいるという。

そして同じ日の24日、教師である友人の母が彼女の小学校に朝早く出勤すると、校舎の周囲を警察が取り囲んでいて、生徒らを連れてすぐ家に帰れと言われた。学校隣の空き地に4人の警察官と2人の小学校の先生の遺体がやはり拷問の痕を残し捨てられていたというのだ。私も以前子どもたちとの交流活動でお世話になったことのあるその小学校の校長先生は、即座にその日から今秋の新年度までの休校を決断した。教育省が何を言おうがもうかまわない。子どもたち、そして仲間たちがこれ以上殺されるのは我慢できないし、何よりも自分自身が心配だと。

(スンナ派居住区である)アダミア地区に住む友人のおばさんが言うには、バドル軍(シーア派民兵)と黒い服に身をくるんだ連中がやってきて、町から300人も連れ去っていき、さらには町を3日間も完全に封鎖しているという。一歩でも家から外に出ようというものならたちまち狙撃されてしまうので、恐怖のあまり食料を買出しに行くことすら出来ないと怯えている。

まだまだ続く。友人が働いている商店街では、13人の名うての商人が惨殺されていた。その内の2人とは卸問屋を経営する友人の父がかつて共に仕事をしたこともあったようだ。当然だが父親はしばらくその商店街に行くのを止めろと言う。バドル軍はスンナ派の知識人だけではなく、商人まで殺そうとしているというのだ。

どんなに治安が悪くなっても、今住んでいる家からは絶対に離れないと頑として譲らなかった彼の父親も、ついに限界に達したのであろうか、バグダード郊外にある祖父の家に家族全員で避難することを検討しているらしい。これまでは、そんなことしたらたちまちに家を奪われてしまうし、そしてモスクの責任者でもあるということで、たとえ一人になって殺されても残ると豪語し、避難を勧める家族には「俺を残して行け」の一点張りの頑固オヤジ。だからといってそうですかと父親だけを残して出て行くわけにも行かず、結局共に残り続けてきた家族の苦しみをしっているから、これまで自分も何とか説得できないものかと一緒に考えてもみた。今回の彼の決断には、これでやっとと喜ぶべきなのに、しかし、いざそうなってみると、まったく実に複雑な気持ちだ。こうしてまたバグダードから友人がいなくなる。今まだ異国の地で足止めをくらったまま、帰国のタイミングを狙っていた彼の兄も、家族が皆祖父のもとに移ってしまったら、さすがにそこに一緒に住むことは出来なくなるかもしれない、つまりはもうイラクに帰れなくなってしまうかもしれないとも言う。こうしてまた、イラクの友からふるさとが奪われていく。しかし、友人をはじめ家族のストレスは、もはや限界をとうの昔に通り越してしまっている。


さて、キョーボーザイはどうにか昨日の採決を逃れたようだが、教育基本法は閣議決定されるわ、チェルノブイリ原発事故20周年もなんのその、青森六ヶ所の日本原燃は、ついに放射性廃液を海洋に放出したという。思わず「おだづなよ」(ふざけんなよ)と、まつろわぬ民、蝦夷人として刻まれた、魂の古層からの憤怒の呻きが毛穴から噴き出した。命を育んでくれたふるさと三陸の海に、なんて言ってお詫びすればいいんだろう。気が付くと、こうして自分のふるさとも奪われていく。

イラク、日本、どっちを向いても、全くしんどい話が続くときは続くものだが、それでも生きねば書かねば話さねば。明日(もう今日か)30日は阿佐ヶ谷で少し話してきます。

4月30日(日)

『Little Birds イラク戦火の家族たち』上映&相澤恭行講演「イラクの今」

時間:13:30上映(開場13:00)
場所:東京都 杉並産業商工会館ホール(JR阿佐ヶ谷駅・地下鉄丸の内線南阿佐ヶ谷駅5分)
前売1000円/当日1300円
主催:「イラクの子どもたちは今」写真展実行委員会

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Comments

確かにしんどいことばかり。
この10年の悪法決まるスピードは上がるばかり。
でも粘らねば、動かねば、立ち上がらねばですよね。
がんばりまっしょい。

Posted by: kurage | May 01, 2006 at 12:33 AM

ほんまやねぇ。
粘り勝ちを目指して一緒に行くわよ。
阿波女は強いんじょ♪

Posted by: 千代 | May 05, 2006 at 02:59 PM

kurage殿、
千代ちゃん、

報告遅れましたが30日は定員をはるかに超え200名もの人が集まってくれました。偏に実行委員のやる気と努力の賜物だと感謝&感動しましたよ。
やっぱりやる気さえあればそこに希望はあるんだと、改めて気付かされた思いです。がんばっぺし、ね。

Posted by: YATCH | May 05, 2006 at 09:42 PM

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