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March 03, 2006

香田さん追想

報道によると、最近バグダード市内でイラク治安当局に逮捕された男が2004年10月に香田証生さんを殺害したときの実行犯だったと自供したようだ。数日前、「イラクのTV局アルイラキーヤが近いうちに香田さんについて報道するという情報があったが、何か詳しいことがわかったら教えてください」という問い合わせが香田さんの親御さんからあったばかりで、イラクの関係者に聞いていたところだったのだが、この容疑者が拘束されたのは3週間ほど前だったというから、なるほどこのことだったのかと納得がいった。

供述によると香田さんはバグダード市内のハイファで殺害されたようだ。当時報道では、ファッルージャで香田さんのパスポートが発見されたという米軍発表による情報を流したきりで、その後の検証記事を見た記憶はない。(どこか検証していたのだろうか?)いずれにしても、香田さんを殺害したグループはファッルージャにいたのだろうという印象を残したまま、世界は現代版ゲルニカともいえる米軍による大量殺戮、あのファッルージャ掃討作戦に沈黙したのだった。

ところで自供したとされる男は、ザルカウィ率いるといわれるアルカイダ系組織に属していると言っているようだが、最近イラクの友人から聞いた話によると、多くの反米抵抗組織が「アルカイダ」という名を使って自らの組織価値を高める傾向にあり、ある種のブランドと化しているようなところもあるようなので、現時点の供述だけで、これもまたザルカウィの仕業かと考えるのは危険である。彼は実行犯であるが、はじめは身代金目的だったのに途中上部からの指令によって自衛隊撤退要求に切り替えたという。殺害を実行しなければ自分が殺されるとも言っているようだが、とにかくこれから首謀者との関係、そして一連の外国人人質事件とのつながり、また彼らの動機や信念など、詳しいことが解明されればと願う。ただ、現在のイラク国内の混乱のせいもあってか、海外報道に関してはこの件についてほとんど触れられていないことを考えると、どうにも心もとないのだが。(どなたか見かけたら教えてください)

また、今回この男を逮捕したイラク治安当局の組織というのがこれまた悪名高い内務省対テロ部隊「オオカミ旅団」というから注意が必要だ。同旅団は、今まさにイラクのスンナ派住民を恐怖に陥れている「死の軍団」ことシーア派民兵組織「バドル旅団」から派生した特殊部隊である。バグダードの友人たちからこれまで聞いてきたオオカミ旅団というのは、家宅捜索と称して金品を強奪、またいい加減な情報だけで証拠もないままにテロリスト容疑をかけて一家の大黒柱を拘束し、解放の条件として法外な身代金を要求するなど、とにかくいい話を聞いたことがない。一連のスンナ派宗教指導者の拷問殺人にも関わっているとも聞く。この逮捕をきっかけに、テロ対策の成果を世界にアピールしたい政府の思惑と絡み、彼らのイメージアップも図られている可能性もある。

何はともあれ、香田さんのお父さんのコメント、「(前略)犯人が捕まってうれしいという気持ちはありません。今は、なぜ息子が殺されなければいけなかったかというむなしさだけです」に深く共感する。仮にこの容疑者が本当に香田さんを殺害した実行犯だとしても、香田さんはけっして帰ってくるわけでもなく、ましてやこれで今後こうした事件がなくなるというわけでは決してないのだ。あの時も、そして今も我々が問いかけられているものは、「誰が香田さんを殺したか」ではなく、「なぜ彼が殺されなければならなかったのか」だと思う。そして、「なぜあんな危ないところに行ったか」ではなく、「なぜあんなにイラクが危なくなってしまったのか」ではないだろうか。

苦しいことだが、もう一度あの時のことを振り返ってみよう。日本政府の「撤退はしない」という交渉への含みゼロの即答を受けて、幸田さんは「米国旗」の前で「日本人」ということだけで殺された。このことが何を意味するか。香田さんはまさに私たち日本人がイラクに積み重ねてきた罪を一身に背負って亡くなっていった。それこそ、日本もその一員である国連お墨付きの大量虐殺である経済制裁という罪から、今日の混乱の元凶である米英軍によるイラク侵略戦争を支持し、侵略軍に付き従う自衛隊という武装組織を送り出し、挙句の果てにはあのファッルージャ総攻撃まで支持してしまったこの国の最高責任者の罪と、その責任者を結局変えることが出来なかった私たち有権者一人ひとりの罪を一身に背負って。

香田さんの行動については、今も当時書いたとおりに評価している。昨年彼のご両親にお会いして、彼のことをたくさん聞いて、なんか昔の自分と重なるところが多くあり、とても他人とは思えず、ますます会いたくなったものだ。昨年のアンマンでもクリフホテルのサーメルからいろいろ聞いたが、彼が生きて帰ってきていたら、きっと共に活動する同士になっていたと思うと、本当に残念でしょうがいない。

彼の思いと共に、これからもイラクと向き合っていこうと思う。

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Comments

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Posted by: Alanna | July 18, 2014 at 05:02 AM

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