12月15日に行われたイラク国民議会選挙、先日日本での個展を終えたハニさんもヨルダンのアンマンにて投票を済ませたそうだ。また、ようやくイラク国内の選挙期間中の厳しい外出規制などが解けて、ネットカフェなどにも行けるようになったようで、イラク現地からも少しずつ情報が届き始めた。
以下、今バグダードにいるイラク人現地スタッフから届いた市民の声のいくつかを紹介。日本での講演を終え現在フランスにいるおなじみの支部長を中継して英訳してもらったので、一週間ほど遅れてしまったが、投票日に聞いたものだそうだ。少し長いが貴重な声なので取り急ぎ全て訳してみた。(回答者の名前は安全上の理由から念のためイニシャルにしています)

投票日のバグダード市内
【質問】
1.この選挙についての意見は
2.この選挙は公正だと思いますか
3.スンニ派とシーア派のこの選挙への参加についてどう思いますか
4.選挙はイラクに治安をもたらすと思いますか
5.あなたはこの選挙に参加(投票)しますか
【回答】
A・Hさん
49歳
シーア派
ジャーナリスト 選挙センターのマネージャー
1.選挙はイラクの未来のための解決策であり、新政府は誠実で治安をもたらしてくれることを望む。
2.公正な選挙であることを望んでいるし、センターとしてもそのように努めている。
3.イラクにはそんな違いはない。スンニ、シーア両派ともイラクが安全になり治安が保たれること、そして全ての人にとってひとつの国であることを望んでいる。しかし占領がわれわれの間に違いを作ろうとしているのだ。
4.選挙はたくさんのことを変えてくれること思うが、それがいい変化であることを望んでいる。
5.はい。選挙には参加します。
D・Bさん(女性)
26歳
クルド人(イスラム教徒)
教師
1.選挙はこの占領をイラクから去らせるために、そして我々の自由のためにとても重要です。
2.はい、公正だと思います。なぜなら多くの異なる市民団体、そして政党などから監視団が来ているからです。
3.スンニ、シーア両派とも選挙に参加するでしょう。占領も、テロリストに好き勝手に我々の国で暴れられるのも、またスンニとシーアの対立という考えを植えつけられることも、彼らは望まないからです。
4.もし新政府がイラクと市民の問題を考えるのなら、この選挙は解決策になるでしょう。でもそうでないのなら、より多くの殺戮と問題が繰り返されるでしょう。
5.はい。この選挙には参加します。
R・Aさん
26歳
シーア派
石油省職員
1.もしこの政府が十分に強く誠実ならば、この選挙は我々の問題を終わらせるための、そしてイラクが再び立ち上がるための真の解決になるだろう。
2.神がお望みならば、公正な選挙になるだろう。国民投票のときの不正はあまりにもひどかったから、今は皆がこの選挙を監視して公正であることを望んでいる。
3.シーア派は間違いなくこの選挙を歓迎している。この選挙は解決策なのだから、スンニ派もまた歓迎することを望む。
4.もし、ナジャフの我々の偉大なイマームが新政権を運営するのなら、よい変化をもたらすと思う。
5.間違いなくこの選挙に参加します。
M・Aさん
45歳
スンニ派
ある政党の職員
1.この選挙は我々の問題を解決する真の手段であり、誰もが参加できることを望んでいる。しかし残念ながら軍事作戦のために参加できない地域がいくつかある。
2.この世界に100%公正な選挙なんてあるわけがないことくらいは知っている。それでも監視人がいるので、いいものになることを願っている。
3.この選挙は治安を手に入れるためには唯一の希望なので、スンニ、シーア両派とも参加するだろう。
4.この選挙が我々の生活をよりいいものに変え、占領軍をイラクから追い出すことができると思っている。
5.はい、参加します。
M・Sさん
22歳
スンニ派
労働者
1.これは民主化にとっていいステップだと思う。そして間違いなく我々は民主化を必要としている。
2.もし国連がこの選挙を監視し管理するならばいいものになるだろうが、そうでないのなら何らかの不正が起こるだろう。
3.シーアもスンニもこれまで民主化が何を意味するか理解していなかった。これまで両派ともそれぞれの宗教指導者が彼らのために何か決定を下すのを待っているだけで、彼ら自身では物事を決められなかったから。
4.良い政府になるのなら、選挙は治安をもたらすと言えるが、もし悪い政府なら、それはより多くの殺戮と破壊をもたらすだけだろう。
5.はい、選挙には参加するし、いかなる指導者や政党の意見にもとらわれることなく、自分自身で選ぶつもりです。

投票箱
*そして最後にフランス滞在中の支部長から;
スンニ派もシーア派も、これまでの悪い政府が終わるという点では喜んでいるだろう。そしてこの選挙は決してスンニのためや良い人々のためとは言えないにしても、少なくともスンニとシーアから良い人間が出てきて新政府に参加するならば、それは未来のイラクに大きな影響を与えることができると思っている。
前回の選挙に参加しなかったスンニと、他の良きシーアの失敗は、決して今回の選挙で修復できるものではなく、時間はかかるだろう。しかし、アヤド・アラウィなど、最近何人かイラク国内の全ての集団をまとめることのできる力を持った人々への支持が高まってきていることはいいことだし、アメリカもまさにアブドル・アジズ・アルハキームの政党(イラクイスラム革命最高評議会)のようなシーア派がイラクの全ての力を握ることは望んでいない。だから新政府は多くの警察や国家警備隊を変えると思うし、決してすぐとは言えないが、悪い方向ではなく、いい方向に向うと思う。

投票所の様子
一般報道によると、選挙の中間集計結果発表が出て、下馬評が高いといわれていたいわゆる世俗派のアラウィ前暫定政府首相率いる国民イラクリストが伸び悩み、ジャファリ現移行政府首相の統一イラク同盟が手堅くリードしているという。そして早速スンニ派勢力からは、選挙に不正があったとの批判が出ているとも。
この中間集計結果を受けて、イラクの市民がどのように受け止めているのかはまだ問い合わせ中なのでわからない。しかし、これまでは選挙のたびにいつも「茶番だ」という声ばかりだったのに、この度の選挙に関しては、少なくとも投票日までは、今回紹介した声でも、直接私が聞いた声でも、ひとつとしてそうした悲観的なものはなかった。
「とにかくこの一年で味わった最悪以上に悪くなることはないだろう、もう後は良くなる以外ないじゃないか」ということだろうか。それとも、実は私もある意味そうなのだが、疲れ果てたイラク市民の心境としては、もう良くなる以外は考えたくないというのが本音なのかもしれない。
いずれにしても、今はもう少し結果を見守り眠りにつこう。枕元にこっそり用意した靴下に穴が開いていないことを確かめて。
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