続々 友情の橋 そして9.11へ
カズミヤに住む友人からも連絡があった。先日のアインマ橋の大惨事、家族も友人も無事だったようで何より。宗教行事は狙われるから、近づかないようにしているとのことだった。
バグダッドでは、先日川に落ちたシーア派の人々を助けておぼれて死んだというアダミヤのスンニ派の若者、19歳のオスマンさんの話で持ちきりだったらしい。そして彼は続ける。
「結局のところ、人間はやはり人間なんだよ。それ(宗派)は問題じゃない。俺達はイラクでこれまでずっと兄弟だったし、これからだってそうさ。そしてこの事故はまさにそれを証明してくれたんだ」
オスマンさんは川に飛び込み6人ほど助けた後、さらに助けようとしておぼれてしまったらしい。政府はなんと通りに彼の名前を付けて称えるそうだ。しかし彼の命は戻ってはこない。彼は一人息子だったということだ。
また、別の友人からのメールによると、橋の犠牲者の多くはサドルシティーからきた貧しい人々だったらしいのだが、アダミヤのスンニ派モスク、アブ・ハニーファモスクに行ってみたところ、犠牲者の家族のための義捐金が集められていたという。ただしこれはどうも政治的な意味合いが強いというコメントがあった。悲しいことに、モスクのすぐそばでは怒ったシーア派による銃撃があり、幸い負傷者はいなかったものの、モスクの壁が被弾したそうだ。
また、シーア派各閣僚を中心に、一人15万ドルほどもの多額の義捐金が寄せられているという。しかし、昨年のファルージャ総攻撃による大惨事のときは、連中今の1%も出していないというのは一体どういうことかと、友人は憤りをあらわにしていた。
その友人によると、今人々は暫定政府時代の首相、アラウィの時代を懐かしんでいるという。もちろん当時も治安は悪かった。しかし当時はまだスンニ、シーア両派の対立を煽るようなことも、今ほどひどくはなかったし、ここまであからさまな不公平感もなかったというのだ。さらに驚いたことには、以前はスンニ派市民に絶大なる支持があったあのイラクイスラム宗教者委員会のことを、今では誰も信用しなくなっているという。おなじみクバイシ師をはじめ、ハリス・アルダーリ師、そしてその御子息のムサンナ氏も今はイラクにいないらしく(もう戻ったかわからないが)、何でももっぱら逃げたという噂である。真偽のほどはわからないが、とにかくこうした噂が立ってしまうこと自体、市民の信用を失っているということだけは確かなようだ。いま、同委員会では来る10月の国民投票で投票に行くようにと呼びかけている。1月の国民議会選挙ではボイコットを呼びかけておいて、今さらどういうことかという不満もあるようだ。確かに今の移行政府でスンニ派の発言力が非常に弱いのも、あのときのボイコットの影響は否定できないだろう。それにしても、わずか数ヶ月の間に、こうも人々の指導者に対する気持ちが揺れ動くとは。
さてさて、ついついまたイラクのことばかり書いてしまった。明日というかもう今日9月11日、ついにこの国の指導者を選ぶ時が来た。私は講演のため、もう期日前投票を済ませてきた。各社世論調査では自公圧勝などとも出ているようだが、最近の世論調査は世論操作でもあるようだから、やはり蓋を開けてみなければわからないと思う。自衛隊と名乗る武装勢力をイラクに送りこんでいるこの国の選挙の結果は、やはりイラクの将来にも大きな影響を及ぼすだろう。アンケートなどではイラク戦争反対、そして自衛隊イラク派遣反対と答えるのに、選挙となるとなぜか行かないという人もいるようだが、あまりにももったいなさすぎる。今こそ選ぶ権利を行使するときだ。この選挙の結果は、今後のこの国のありかたを大きく決定付けることにもなるのだから。
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