« 遠くから | Main | 広島に行ってきます »

July 28, 2005

司法の死

昨日(26日)は甲府で講演。台風で朝から雨が降りしきる中、まずは甲府地方裁判所に行き、講演の主催者、「派兵は決定的違憲」市民訴訟の会・山梨が原告となっている第4回口頭弁論を傍聴した。今回は前回申請した証人の千葉大の小林正弥さんやJVC代表の熊岡路矢さんが採用されるかどうか、つまり実質審理に入れるかどうかという重要な日だったそうだが、結果は全員却下。その上裁判官は腰を上げながら小さな声で「結審します」と呟き、そそくさと逃げるようにして退廷。続けて怒号飛び交い騒然となる法廷を、被告人である国の代理人は、にやにやとうすら笑いすら浮かべながら退廷していった。

自衛隊のイラク派兵差し止めに向けた違憲訴訟は、北海道の箕輪登氏(元郵政省)の訴えを皮切りに、今では全国12箇所で市民訴訟運動が展開されている。こうした違憲裁判は勝つ見込みがほとんどないらしいが、結果がどのようになろうとも、こうした運動が全国に広がることで国内外に自衛隊の違憲性をアピールするいい機会だと思っていた。やはりどこも実質審理には厳しい状態だが、山梨はわりといい流れだったらしいので、原告の皆さんの衝撃もなおのこと大きかったようだ。

証人を全員却下して結審とは、すなわちもうこれ以上話し合う必要は全くありませんということ。とにかく驚いたのは、判断に至った理由の説明が何ひとつなかったことだ。これには弁護士の皆さんも前代未聞のことだと言う。

イラクの戦場は体験していても、恥ずかしい話、裁判を傍聴したのは生まれて初めてだったが、実に貴重な瞬間に立ち会ってしまった。やはり何事も現場が大切だと改めて思う。

「司法の死」

これが初めての法廷の現場の感想である。

これまでイラクの現場で多くの死を見てきた。振り返れば、あの国際法違反の先制攻撃であったイラク戦争が始まるときも、何かが死んでいくのを感じた。そしてバグダッドが陥落し、遺体収容を手伝ったときも、結局世界は圧倒的な暴力に支配されているという絶望感と共に、何かが自分の中でがらがらと音を立てて崩れていく死を感じた。世界はなんと多くの「死」に囲まれていることだろう。

ちなみにお金がお金でいられるのは、みんながお金を信じているからだ。一万円札なんて原価価値など数十円に過ぎないただの紙切れにすぎないのに、みんなが一万円札は一万円分の価値があると信じているから通用している。法だって同じだと思う。ただの言葉でも、みんなが法と信じているから法なのだろう。

法を司る人間が法を殺す。私が目撃した裁判官の説明放棄の逃避行が、法の自殺だったとすれば、この先やってくる未来はどのようなものだろうか。その日は、ある日突然やってくるかもしれない。誰もが、死の間際まで自分は死なないと思っているのと同じように。

|

« 遠くから | Main | 広島に行ってきます »

Comments

「司法の死」って、まだ諦めるのは早すぎますよ。
要するに、連中が否定できないような証拠の山を突きつけてやればいいのですよ!

 今、綿井健陽さんがサマワで取材中。
『綿井健陽のチクチクPRESS』
http://blog.so-net.ne.jp/watai/

市内の日の丸撤去を要求 サマワのデモ隊
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050726-00000255-kyodo-int

電力、給水の改善求めデモ=知事に日本国旗撤去を要求-イラク・サマワ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050726-00000095-jij-int

サマワ・日本友好協会前会長の店が砲撃被害
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050726-00000403-yom-int

サマワで警戒態勢強化=住民、報復恐れ口つぐむ-前日本友好協会長の店爆破で
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050726-00000019-jij-int

日本友好協会を解散=相次ぐ脅迫受け-デモ隊から「裏切り者」・サマワ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050724-00000017-jij-int
http://www.ngy.1st.ne.jp/~ieg

Posted by: wattan. | July 28, 2005 at 07:40 AM

 なんとなく、今までにもあったような裁判事例の不可解さをもった審査だと思いました。
 この却下はいわゆる統治行為の理論に依るものなのだろうか?そうだとしたら、サマワの報道規定と云い、日本国民が基本的な政治性をもって自衛隊の活動を監視・批判すると言うことが以後不可能なことを、これらの裁判が決定付けてしまうかもしれません。前例を作ってしまえば、ということでしょうか…確かに司法は瀕死ですね。
 それから、日本では情報としての、自衛隊が軍隊ではないということを未だ鵜呑みにしている人や、政治的な不条理な死を自らと関わりの無いことだと、最初からニュースのオカズ程度でしか認識しない人が多い気がします。

Posted by: stickman | July 28, 2005 at 10:37 AM

傍聴が初めてだったってものあるし、そのくらい衝撃が大きかったってことですよ。原告のみなさんも早速忌避申立書を提出、弁論再開の要請をしていますから、もちろんあきらめるわけではありません。

しかしまさに証拠の山を突きつけようとして証人を要請していたのに、それが何一つ理由の説明なしに却下され結審ですからね。

こりゃあこの先相当覚悟していかないとなあと、改めて身が引き締まる思いでした。

Posted by: YATCH | July 28, 2005 at 11:43 AM

この裁判長も、逃げていますね。こんな大切なこと。無責任体質もここまで来ているとは。
これからは、個人・市民がしっかりしないと。

Posted by: 悪夢で逢いましょう | July 29, 2005 at 10:50 PM

>自衛隊のイラク派兵差し止めに向けた違憲訴訟(中略)が全国に広がることで国内外に自衛隊の違憲性をアピールするいい機会

あれ、この裁判は「自衛隊イラク派兵違憲訴訟」ではなかったのですか。自衛隊の違憲性がテーマとしたら、さらに重大なテーマではないのですか。
自衛隊違憲判決で有名な長沼裁判では、裁判官が苦悩に苦悩を重ね辞任まで追い込まれていた時、多くの市民の応援と支持があって出されたものと聞いてます。
重大なテーマよりも、地道なテーマにこそ力を集中すべきではないのですか。

Posted by: 人間の籠手 | July 29, 2005 at 11:29 PM

>自衛隊イラク派兵違憲訴訟、平和的生存権
何々?

>カンボジアとかゴラン派兵反対!と言ってきた時と何も「進歩」なし。

>単なる「反体制」ごっこやっているなら、迷惑千万だ。

Posted by: 着信拒否2 | July 29, 2005 at 11:42 PM

みなさん書き込みありがとうございます。

悪夢で逢いましょうさん、

裁判官はまさに「逃げる」ように退廷しましたよ。どういう気持ちだったのか聞いてみたいです。

人間の籠手さん、

「自衛隊の違憲性をアピールするいい機会」というのは私の個人的なひとつの見方に過ぎず、重大なテーマであることはもっともです。私は私なりにイラクの支援と文化交流を地道に続けさせてもらっています。今回初めてこの裁判を傍聴する機会をいただき、いろいろと考えさせられることがありました。まだまだ勉強させていただきます。

着信拒否2さん、

単なる反体制ごっことは思えません。自衛隊が派兵されてからというもの、日本人というだけで攻撃対象になるリスクは格段に増していて、イラク現地に入る民間人にとっては死活問題ですし、今後はイラク以外でも日本人というだけで殺害の対象になりえると思います。平和的生存権が脅かされているのは間違いありません。

Posted by: YATCH | July 30, 2005 at 01:50 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/44849/5195728

Listed below are links to weblogs that reference 司法の死:

« 遠くから | Main | 広島に行ってきます »