イラクは今
「稲妻作戦」と呼ばれるイラク軍と米軍による掃討作戦が続くバグダッド。友人からのメールによると、イラク軍は家宅捜査と称して問答無用で住居に押し入り、手当たり次第なんでも物色していくので、大切なものはみんな隠さないといけないそうだ。また、顎鬚を長く伸ばしていると、米軍にムジャヒディン(イスラム戦士)と見なされ拘束されてしまうというので、短くしている人が増えているらしい。しかし短くしていると今度は逆にムジャヒディンに不信心者とみなされ、処罰の対象になってしまうというから、全くたまったものではない。外出もままならず、地域によってはモスクに礼拝にすら行けないほどだという。また、イラク軍並びに警察は、イラクにいる外国人なら誰でも身柄を拘束し尋問する権利を与えられているそうだ。
そんな中、移行政府によるパレスチナ人に対する扱いは一層ひどくなっていて、拘束から拷問まで、彼ら曰くもはや「犬以下」だそうだ。サダム政権崩壊直後から、これまでの支援が断ち切られたイラク国内のパレスチナ人の境遇は悪化していたのだが、今度はさらに彼らをイラクから追い出そうとしているとも聞く。これまでPEACE ONが支援してきたパレスチナ難民キャンプのあるハイファクラブも、今年はじめにデマ情報による米軍のがさ入れを受け破壊され、責任者のQ氏は家族もろともドイツに避難したままである(過去記事参照)。祖国を追われた流浪の民が、またしても追い立てられていく。この艱難の旅路は、一体どこまで続くのだろう。
先月斎藤さんが襲撃を受けたヒート出身の画家、ハニ・デラ・アリさんは、これまでバグダッドで家族と住んでいたが、この度ヨルダンに移住した。治安が悪すぎて、とても暮らしていけないからだそうだ。昨年の8月までは何度もあの暖かい家庭におじゃまして、うまい家庭料理をたらふくご馳走になりながら、芸術談義に花を咲かせたものである。しばらくはあそこでハニさんと会うことが出来ないと思うと、何ともやりきれない。そういえば今度はヒートに連れて行ってもらう約束もしていたのだが、この分ではいつになることやら。
一度失ってしまった平和を取り戻すことは、これほどまでに困難なことだったとは。こうしてイラクの現状を伝えるのは、正直言ってしんどくて、ブログの更新が遅れ気味になってしまっている。しかし私なんかよりも、故郷イラクから出国せざるをえなくなってしまった友人たちの想いは、如何ばかりだろうか。そして日々命が崖っぷちに追い込まれているイラクの友人たちの想いはどうだろう。そんな友人たちが、無事に生き延びてくれていることは、大いなる希望のひとつではないか。そういえば彼らもイラク・ブーメラン意見広告プロジェクトの成功には大喜びしてくれていた。とにかく彼らの声を伝え、繋げていこう。そのためにも、この生かされてここにある命に感謝して、しっかりと毎日を生きていかなければ。
Comments
YATCHさん。ご苦労さまです。
随分と最近はイラクの状況に心を痛めていらっしゃるようですね。
時々気分転換に全く違う環境へ出かけてみるのも悪くないのではないでしょうか。
話は変わりますが、今の日本の政治や社会などの状況をどうお考えでしょうか。
(私は「胡散臭く」感じています。)
お時間の或るときで結構ですので、ご返答頂けましたら幸いです。
Posted by: Nobody Knows | June 10, 2005 at 04:25 PM
Nobody Knowsさん、
そうですね、時々たまらなくアイルランドが懐かしくなります。
今の日本の政治の胡散臭さは鼻もよじれるほどですが、残念ながら結果的に黙認している我々も、そうとう胡散臭いのかなあと。
日本社会の問題、これはいつもイラクに行くたんびに考えさせられてきましたね。挙げればきりがないのですが、例えば年間3万3千人を超す自殺者の問題。これイラク人に言うと「なんで死ぬんだ???日本には何でもあるじゃないか?」って怒られちゃうんですよ。一日90人以上ですから、ある意味戦場ですね。戦争の不在=平和とは括れないなあと思います。
もっと話したいのですが、今日はこの辺で。
Posted by: YATCH | June 12, 2005 at 04:34 AM
ヤッチのブログをひさしぶりに見ました。
どうしてイラクの人が自分の居場所に安心して暮せないのか。ホントにおかしいです。その責任の一端は我々「日本人」にもあるのですが。
イラク人がそんな状況ですから、パレスチナ難民の大変さといったら想像も出来ないくらいでしょうね。
こんな日本にいて、でも「ブーメラン意見広告プロジェクト」は一服の清涼剤のような感じでした。
Posted by: ぴろりん | June 16, 2005 at 10:57 PM
総会にむけて大忙しですね。
おつかれさま&いつもありがとう~。
イラクの情勢はメディアが伝えないので知らなくても
仕方ないともいえますが、国内の胡散臭さに
ついては、まったく情けないですよねぇ。
いろんな方向・いろんな角度から、工夫して波を
起こしていけたらいいなぁ。せめて自分のナットク
いく生き方をしておこう…と思う近頃のワタクシ(^^)
Posted by: N-Saya | June 19, 2005 at 03:35 PM
ぴろりんさん、
こちらもブログ更新だけではなくコメントの返事まで遅れ気味ですみません。パレスチナ人の友人はなんとか無事のようで安心しましたが、周囲の状況はかなり厳しいようです。詳細がわかればまたお知らせします。
N-Sayaさん、
そうですね、嘆いていてもはじまらないので、それぞれが出来ることをやっていくしかないと思います。お互いいろいろやりながら、これだっ!てのを見つけていきましょう。インシャアッラー(神がお望みならば)の精神で。
Posted by: YATCH | June 24, 2005 at 01:17 AM