身体
久しぶりに夜の街を走ってきた。ただでさえ蒸し暑くべとつく夜なので、せっかくだからこの暑さを利用して汗をかこうと思い立ったのだが、やはり身体を動かして汗をかくのは実に爽快だ。サウナもいいが、こうして走ってみると皮膚の裏側にこびりついていたり五臓六腑に沈殿していたりしている何やら澱のような悪い「気」までが汗とともに毛穴から放出されるようだ。
ここしばらく講演以外は決算やら事業報告書の作成に追われてパソコンの前に張り付きっぱなしの毎日だったので、相当な電磁波を浴び続けているせいもあるのだろう。また、イラク情勢は悪くなる一方で現地との連絡もなかなかうまくいかず、やっとこさメールがきてもどうにもこうにも凹んでしまう内容が多かったのもあり、正直パソコンを開くのもちょっと憂鬱になっていた。
最近ネット上で見た記事で、「一日5時間以上のパソコン使用で鬱や不眠が増加」とあったが、ここ最近は5時間なんて軽く超えていた。昔はパソコンのパの字も知らないアナログ人間だったのだが、今ではパソコンがなければほとんど仕事にならないし、かなり依存しているのは間違いない。ある種の鬱だったのかもしれないと思う。
これは昨年の8月以降、イラクに入れていないというのも大きいかもしれない。振り返ればこれまでイラクに行くたんびに、「生きる」ことを全身で表現するイラク人と触れ合って元気になって帰ってきていたような気がする。イラク支援とは言いつつも、実際のところはかなり彼らに助けてもらっていたなあ。
思えば開戦前初めてイラクに行こうと思ったきっかけのひとつに、身体性を取り戻そうというのがあった。この爆発的に肥大していく情報化社会の中で、実は逆にわれわれの身体を通じた情報や知識は枯渇していっているのではないか。五感を通して世界を掴み取ることから遠く離れ、虚空に浮遊する記号と戯れるだけで語られる「戦争」に強烈な違和感を覚えていた。まずはそこに行ってみて、自らの身体を通じてこの世界を再認識してみたかったわけである。
話は戻るが、以前は週に一度は走っていたのに、イラクに行くようになってからとんと走っていなかった。これまで失った世界を取り戻すためにも、また走ろうと思う。
*サマワで自衛隊の車列が始めて路上爆弾によって攻撃されたという報道があったが、その後治安当局が現場付近を一斉捜索して不審者計50人以上を拘束、しかしその中に容疑者が含まれているかどうかは不明という記事があった。おそらく当局は迅速な対応をしているという自衛隊や日本政府に対するアピールだと思うが、こうした対応が無実の拘束者の不満を高めていく結果、治安が悪化していくのではないだろうか。やはり外国軍がいることによって保たれる治安よりも、外国軍がいることによって悪化する治安のほうが深刻であろう。


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