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May 10, 2005

戦争の民営化 「ピープルOK?」

またしてもイラクで日本人が拘束された。昨夜午前一時頃通信社から「サイトウ・アキヒコさんってしってますか?」と一報を受けてから速報を追っていると、はじめは私のしらないジャーナリストの方だろうかとおもっていたが、拘束された斎藤昭彦さんは何と米軍下請けの民間の警備会社で働いている方で、しかも米国防総省の身分証明証までもっていると聞いて仰天した。こうしたいわゆる外国人の傭兵は今のイラクに2万人以上もいるという。昨年の8月バグダッドで活動中、ネパール人の傭兵にはたくさん会ったが、まさか日本人も傭兵として入っていたとは。

戦闘があったといわれるヒートは、ラマディから近い小さな町で、LAN TO IRAQ(イラク現代アート)の代表作家、ハニ・デラ・アリさんの生まれ故郷。何度か写真を見せてもらったが、風化した古代の遺跡とユーフラテス川の美しさが時代を超えて調和するのどかな田舎町で、彼の作品にも大きなインスピレーションを与えているという。

イラク人のバグダッド支部局長にも早速連絡したが、彼は現在あいにくイラクを留守にしているので現地との連絡は困難な状況であり、過去の日本人人質事件の時同様に現地のイラク人のネットワークを活かして救出の糸口を探るということができないままでいる。仮にうまくこれまでお世話になってきたイラクイスラム宗教者委員会にコンタクトが取れたとしても、こうした傭兵、米軍下請けの戦闘要員に対しては、これまで通りの協力は残念ながら期待できないだろう。

斎藤さんは自衛官OBで、フランス外国人部隊として各国の戦場も体験しているという。どういう理由で、そうしてどういう気持ちでこの度傭兵となりイラクで働いていたのかわからないが、彼のご家族や友人の方々のことを考えると、何とかなるものなら何とかしたい。しかしこれが現在のイラクで起きている厳然たる戦争の現実であり、日々イラク人が感じている恐怖でもある。

そしてこの度の事件は、まさに戦争の民営化がもたらしたもの。そういえば昨年4月の日本人人質事件の背景となったファルージャ包囲攻撃も、3月末に4人の米軍請負の傭兵が殺害されたことがきっかけとなっていた。こちらのメディアでいくら民間人と報道されようと、現地の人間から見れば今のイラクに武器を持って入ってくる外国人はりっぱな戦闘要員である。現地の抵抗勢力にとって、もはや入ってくる外国人が一般の市民なのか戦闘員なのか見分けがつかないので、昨年の安田君たちのようにとりあえず拘束するというケースが増えたのもこうした戦争の民営化の影響だろう。

この度斎藤さんを拘束したというアンサール・スンナ軍のことはあまり詳しく知らないが、これまで外国人に対する様々な事件でかなりよく名前が出ている。これまで人質を盾に何か要求をしたことはないらしいが、この度彼だけが生きて捉えられ、その事実をウェブサイトで公表した意図は一体何なのか。これから何らかの要求があるとすれば、それはどういったものになるのだろうか。

重傷を負っているという彼の身の上と同時に案ずるのが、いかなる要求が出されるにしても、その取り扱われ方によっては、それがイラクの人々、そしてアラブの人々に対して、「ああ日本は自衛隊に飽きたらずついに民間人まで米軍と一緒に銃を持ってやってくるようになったか」と、つまりもう日本はアメリカと官から民までなんら変わりなくなってしまったんだなあという印象を与えてしまうのではないかということである。昨年香田さんが米国旗の上で殺害されたのも、もはや日本は敵国であるアメリカと同じだという強烈なメッセージであったが、この度の事件も、これからの扱われ方によってはそうした印象を決定付けてしまう可能性がある。そうなってしまえば、今後ますます我々日本の市民がイラクの市民と交流することが困難になっていくのではないだろうか。これはお互いの未来にとって大きな損失となりうる。

戦争中、イラク人にお茶をご馳走になりながらよく言われたのが、「ジャパニーズピープルOK、ガバメントNO、NO」。つまり政府と一般市民をきっちりと分けて考えてくれていたからこそ、この度の戦争に首相が支持を表明し事実上の敵国となっても安全に活動ができていたわけなのだが、こうした戦争の民営化は、こうした分別を撹乱させる要素をも持っている。

33歳最後の一日、悶々とした時間が流れていく。

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Comments

Yatchさん、
34歳の誕生日おめでとう。世界で何が起こっていても兎に角、無事に歳を取れるということはありがたいことです。命はすばらしい。

 拉致された斉藤氏は、第一空挺団普通化群第二中隊・・・。空挺には彼以外にも何人も外国の戦闘地域に個人で参加した者たちがいました。ある者は金や名声の魅力に憑かれたり、ある者は志や大儀に憧れたり、理由は様々でした。また、元自衛官だけではありません。似たような者たちはまだ大勢存在します。

 こういう人たちが今後、どのような生き方をしていくのか関心があります。

 メディアなどではしきりに「傭兵」という言葉が飛んでいますが、一銭の金にもならない闘いに参加した“義勇兵”という者もいるということをご記憶にとどめて置いてください。

 35歳過ぎたらもう歳は気にならなくなりますよ!

Posted by: wattan. | May 10, 2005 at 10:51 PM

おお、wattanありがとう!睡眠不足のまま34歳になりました。生んでくれた母に、そしてここまで生かせてくれた全ての命に感謝してます。

>メディアなどではしきりに「傭兵」という言葉が飛んでいますが、一銭の金にもならない闘いに参加した“義勇兵”という者もいるということをご記憶にとどめて置いてください。

わったん本読みましたからご心配なく。そういえば傭兵と義勇兵をごっちゃにしている人って結構いるんですね。僕もイラク戦争中友だちになった外国人戦士は傭兵ではなく義勇兵でした。

>35歳過ぎたらもう歳は気にならなくなりますよ!

実はすでに27過ぎた辺りから時々自分の年齢忘れていますよ。


Posted by: YATCH | May 11, 2005 at 03:11 PM

YATCH,お誕生日おめでとう。年は大分違うけど誕生日は1日違いなので私は今日誕生日です。
「戦争の民営化」、まさにそうですよね。日本のパスポート持ってる人でも傭兵がいる、ということに迂闊にも今まで思い至りませんでした。でもここまで「グローバル化」が進んでいるんだから当然といえば当然かもしれないことですね。
自衛隊のイラク派兵を批判できない日本のマスメディアに期待すべくもないことですが、「傭兵」と言わずあくまで「警備会社社員」と言い続け、一方でイラクの人の抵抗を「テロ」と言い続けることによって、イラク人と日本人の事実に対する認識の差がどんどん広がり、YATCHが危惧するように、日本の市民がイラクの市民と交流することがますます困難になっていってしまうでしょう。
さて、どうしたらいいか。
とにかく占領軍たる自衛隊を撤退させるのが第一なんですが。

Posted by: ぴろりん | May 12, 2005 at 09:27 AM

Yatchさん、はじめまして。
以前からサイトの方、拝見させていただいてます。

香田さんが亡くなってから早半年、
今回の事件をまた痛ましい思いで見ています。
邦人の時だけ騒ぎ立てる日本のメディアにも腹がたちますが、
それ以前に一体どれだけの犠牲者を出せばこの国に明るい見通しが出てくるのか、
その点が最も疑問です。

「戦争を見なければ戦争は語れない」
私と同い年だった香田さんは生前そう言い残していたそうですが、イラクの方々も含め、
命を賭すことでイラクの現状を伝えてくれた人たちを、どれだけの日本人が覚えているんでしょうね。

(ついででなんですが、お誕生日おめでとうございます!)

Posted by: ペリー | May 12, 2005 at 02:01 PM

YATCH、誕生日おめでとう。34歳になってすぐ四国へおいでいただき、めちゃ嬉しいです。明日、5月15日は徳島講演会で安田さん共々お世話になります。
さて、齋藤昭彦さんの事件でわたしも心痛めています。日本の市民と政府は違うと訴えつづけていましたが、考えてみれば当たり前の話で市民にもいろいろな人がいてこうして傭兵となってイラク入りしている人もいたのですね。齋藤さんがどういう信念で傭兵という生き方をしているのかは分かりませんが報道される彼の経歴と今の仕事をみると私も状況は厳しいと感じます。
しかし、傭兵ー兵士なら死んでも仕方が無いと言うわけでは全く無く奇跡に近いでしょうが平和的な手法による彼の生還と日本の政府の政策転向を祈ります。
今回の報道では齋藤さん個人が何故イラク入りしていたのかが相変わらず問われていますが、そんなことよりもアメリカや日本が何故イラクにいるのかという歪みのほうを追求してほしいです。前回のイラクで拘束された邦人の青年の事件で小泉さんは開口一番「自衛隊は撤退しない。」と命綱をすっぱり切る発言をしましたが、今回それをしないのは齋藤さんが傭兵であった為彼を批判すれば日本の自衛隊の活動自体も問われるのを恐れているのかなと言う気がします。
そんなん、おかしいやん。
イラクの人も日本の人もアメリカの人もアフガニスタンの人ももう誰も死んで欲しくないです。一握りの人たちのお金のために誰も望んでいない戦争に誰もが巻き込まれていくのは耐えられない。
戦争をとめる為にできることを私もしつづけていきます。

Posted by: 千代 | May 14, 2005 at 04:43 PM

 はじめまして。イラクに詳しいYatchさんや、軍事に詳しいWattanさんから、ご指導いただけると幸いです。とにかくこの件、難しいです。

 斎藤昭彦さんに関して、雇用者の英国系警備会社や所管する英国政府、契約先らしい米軍やイラク政府が口をぬぐうのをみると、傭兵とは使い捨ての存在だと感じます。そして、見捨てられた傭兵を母国である日本が救出に動くのは正しい。なぜなら、反戦活動家でも、ジャーナリストでも、旅行者でも、傭兵でも、自国民を救出するのが日本国家の義務だと思うからです。

 その上で、国際法上違法の疑いが強い傭兵制度の実態を暴きつつ、この人物してきた行為を捜査すべきだと思います。なぜなら、仮に国外で殺人行為をすれば日本人には刑法3条の国外犯の規定が適用される筈だからです。イラク駐留の自衛官ですら、正当防衛以外の戦闘が禁じられている筈です。

 また反戦活動家として、人道上の見地から、斎藤さんの救出を訴えることも正しいのでしょう。しかし、ファルージャ爆撃をはじめとする米英軍の戦闘行動に加担した行為は許せない。斎藤さんは平和維持行動のつもりかも知れないが、そうだとすると私とは見解が大きく異なります。さらに私にとって難しいのは、アンサール・スンナ軍をどう評価するかという問題です。まさか、日本人が義勇兵として、この組織にいるとは思えませんが。。

Posted by: TOCKA@Chechen | May 16, 2005 at 11:14 PM

おお、四国講演行脚から戻るとみなさんの長いコメントが、しかも誕生日のお祝いの言葉付きで。ありがとうございます。今回どうも携帯での接続が大変でほとんどチェックできていませんでした。遅ればせながら以下返信します。

ぴろりんさん、先月北上講演ではどうもお世話になりました。そして遅ればせながら誕生日おめでとうございます!

>一方でイラクの人の抵抗を「テロ」と言い続けることによって、

まったく最近はどの記事を読んでも軍事施設に対する攻撃ですら平気でテロテロと書く傾向が著しいですよね。まるで一種の呪文ですよ。

ペリーさん、どうもはじめまして。

>「戦争を見なければ戦争は語れない」
私と同い年だった香田さんは生前そう言い残していたそうですが、イラクの方々も含め、
命を賭すことでイラクの現状を伝えてくれた人たちを、どれだけの日本人が覚えているんでしょうね。

身体感覚が磨耗し生命のリアリティが麻痺しかけた文明社会ならではというか、そのような人々を忘却することで、自らの正気を保っているのかもしれませんね。

千代ちゃん、徳島では安田君と共にお世話になりました。とても愉快な拘束体験?になったよ。

>前回のイラクで拘束された邦人の青年の事件で小泉さんは開口一番「自衛隊は撤退しない。」と命綱をすっぱり切る発言をしましたが、今回それをしないのは齋藤さんが傭兵であった為彼を批判すれば日本の自衛隊の活動自体も問われるのを恐れているのかなと言う気がします。

今回の場合、拘束したという声明から全く事態が進展していなく、自衛隊撤退等の要求がまだ一切ないというのが大きいでしょうね。

とにかく誰であってもう殺されてほしくないです。

TOCKA@Chechenさん、はじめましてと思いましたが、念のためブログ覗いたらなるほど。どうもご無沙汰してます。

>アンサール・スンナ軍をどう評価するかという問題です。まさか、日本人が義勇兵として、この組織にいるとは思えませんが。。

今回の件、駐留米軍側の日本人「傭兵」ということで衝撃でしたが、アンサールスンナ軍に限らず、どこかの反米抵抗勢力に、もしも日本人「義勇兵」がいたら?とも考えてしまいます。


Posted by: YATCH | May 20, 2005 at 02:03 AM

Yatch さん。お久しぶりです。山口花能です。
いつもブログを読ませてもらっています。
ところでTOCKAさんの書き込みがありましたが、TOCKA=山口ではありません。別の人です。

齊藤さんの件はいまだに安否が知れず、心配ですね。日本メディアはすでにこのニュースから離れてしまったようですが…。外務省の対策本部も縮小され、齊藤さんの弟さんも「ぜひ縮小してください」と言ってしまう、このような政治的雰囲気には違和感と淋しさを感じます。

Posted by: kanoh | May 21, 2005 at 03:22 AM

kanohさん、どうもご無沙汰です。なるほどTOCKA@Chechenさんではなかったんですね。kanohさんのブログに飛んだのでてっきり本人だと思っていました。

斎藤さんの件、確かに情報が少なすぎますね。というかイラクの報道自体が縮小されてますが。

Posted by: YATCH | May 24, 2005 at 03:23 PM

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