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March 07, 2005

諸行無常(5日)

以前バグダッドで出会ったヨルダン人の友人Mとの案内で、アンマン郊外のシャファ・バドラン地区を訪れる。Mはアラブの遊牧民「ベドウィン」の家系で、彼の父の墓がここにあるという。一帯はベドウィンが住む地域。アイルランドを思わせるような緑と岩のコントラストが夕陽の朱に染まりゆく風景に郷愁のようなものを感じながら、墓場から連なるゆるやかな丘を登り、ローマ時代の遺跡があるところまで連れて行ってもらった。

突如として地面が四角にくりぬかれている箇所が多数出現する。中には折れた円柱がごろりと横たわっていたり、細かいタイル目地のような文様が薄っすらと砂から顔を出していたりしていて、Mは無造作に靴で砂を払うものだから一部が砕けてしまったりと、全く保護などされていなく野晒しの状態であった。

やがて古代のロマンに浸る空気を突き破る怒号が響き渡り、赤いクフィーヤを頭に巻いたベドウィンのオヤジが凄まじい剣幕でやってきた。しかしMが説明すると次第に皆さん破顔一笑。Mは自分の家系を説明したそうだ。どうやら数年前この遺跡の発掘時にずいぶんと金がでたそうで、オヤジは一応見張り役をしているらしい。

IMGP4143諸行無常、盛者必衰、思わず平家物語の一節が口からこぼれる。全ては変わり続ける。あのローマ帝国も滅びた。現在の帝国はいつまで続くのだろう。誰もが死からは逃れられない。天を仰ぐ石版のレリーフには、どれだけの想いが刻み込まれてきたのだろうか。日輪からの光は幾万もの夜をこえて、風化の進む文様のひとつひとつに染み入るように注ぎ込まれ、今、再び落日を迎える。そしてこの度の旅の終わりが近づいている。

帰りの車の中で、Mは友人のOとベドウィンの唄を口ずさむ。心地好い拍子と旋律に、魂の古層で錆付いていた記憶が時空を超えて共鳴する。唄は終わるし、唄い手も一生も、終われば夏の夜の夢のようなものかもしれない。風の前の塵のように万物は流転するなかで、それでも精神を介し伝え続け変わらぬものが確かに存在すると信じる。そしてそういう有り難いものに、いつも触れることができるような人間でありたい。

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Comments

今回もいろいろ実りある滞在だったようですね。
ぜひ、帰国後の報告を期待しています!
こちらでの報道はどんどん減少しているので……。
でもネット上の記事はどの内容も均等のサイズで
書かれていて、逆に不思議な気がしてしまいます~。

Posted by: N-Saya | March 08, 2005 at 03:34 AM

N-Sayaさん、どうも無事戻りました。行く度に友達が増えて住みやすくなっていきますよ。

しかし本当に報道は激減していますよね。ハリリ氏爆殺の件なんか、今後の中東を運命を左右する大変なことなんですけどね。

Posted by: YATCH | March 09, 2005 at 11:59 PM

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