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November 02, 2004

香田さんの死に想う

香田さんの人質事件は、残念ながら最悪の結果をむかえてしまったようだ。彼が感じたであろう恐怖、そしてご家族の方々の心痛を想像すると言葉もない。

10月30日未明に発見された遺体は香田さんではなかったと情報が一転してから、再び現地と連絡を取り始めたのだが、実はわずかではあったが希望の持てるような情報を受けとっていた。とり急ぎ翻訳してブログにUPしようとした矢先に、再び香田さんではないかという速報が飛び込んできてしまった。以下は参考まで。

~以下サラマッドから30日に受け取ったメールより~
マイフレンド、いい知らせが二つある。ひとつはティクリットで見つかったその男は日本人じゃなかった。もうひとつは今日イスラム法学者協会に行ってクバイシ先生と会ってきた。先生曰く、その日本人(香田さん)についてはすでにたくさんの電話を日本や他の国からも受け取っているので、その武装グループに対して、メディア向けに以下のメッセージを公表することにしたとのこと。「もしあなた方が我々導師、イスラム法学者のメンバーの声を聞くのであれば、以下のことをなすかその日本人(香田さん)とマーガレット・ハッサン(なぜならその宣言は二人について)を解放すること。もし、あなた方が言うようにその日本人が軍隊(自衛隊)と働いていて、マーガレットがスパイの一種だというのなら、その証拠を全てのイラク人に見せなければならない。そうでなければ解放すること。」そしてクバイシ先生はまた、「われわれはまだ彼ら(香田さんとマーガレットさん)が軍と働いているまたはスパイなどという証拠を持っていない。よって武装グループに対して彼らを放すように、つまり解放するように呼びかけてみた。」とも言ってくれた。

以上今日の出来事。

~以下原文~

my friend, I have 2 good news, one of them is that man who was found in Tikrit is not japanis, other one is today I went to islamic board and I met dr.al kubaisi and he said that already we got too much phone calls from japan and from other countries about that japanis, so we make declare media and we told the armed group that, if you listen to us we shaiks and members in Islamic board you have to do that or you leave that japanis one and Margaret Hassan (because that declare about both of them ) or if as you said about japanis one he work with army and about Margaret she is kind of spy so you have to give to all the Iraqis people prove about what you said or you leave them. And he said also (I mean kubaisi ) we dont have prove yet they work with army or spay, so we asked that armed group to leave them I mean release them.
that what happened today.

この度の相手は説得が効く相手ではないと一度さじを投げてしまい、犯行グループとの接触の糸口は依然として掴めていなかったようだが、クバイシ先生は人道的措置ということでこうした呼びかけに動いてくれていたようだ。

このほかある友人からは、グループと何らかのコンタクトを取れる可能性のある人物を紹介できるかもしれないという連絡も受けていた。また、あのグループはアルカイダでもザルカウィーが関与しているわけでもないとも。どこまで本当かわからなかったが、現地の協力者も徐々に増えてきて、長期化すれば解放の可能性も出てくるかもと思っていたところだったので、本当に残念でしょうがない。4月の高遠さんたちのとき同様、イラクの市民のネットワークをいかして解放に結びつければと思ったのだが。48時間、あまりにも時間が足りなすぎた。

それにしても香田さんが捕えられた直後から、世論はいかに彼を救出するかではなく、彼がなぜイラクに入ったのかというところばかりに焦点をあて、無謀な若者という印象ばかりが一人歩きしていたような気がする。前回の日本人人質事件のときもそうだったが、まだ安否がわからないうちから自己責任だと突き放したり、ご家族の方々にも中傷の電話などが相次いだりと、ただでさえ弱い立場に陥った人々をさらに苦しめるという風潮には本当に悲しくなった。

私は香田さんと会ったこともないが、本当にどういう気持ちでイラクに入っていったのか、ぜひ聞いてみたかった。報道によると、「イラクで起きていることを見てみたい」とも言っていたらしいが、それが動機だとすれば昨年私が初めてイラクに行ったときの目的のひとつ、「いま世界で起こっていることを自分の五感を通して知りたい」とほぼ同じではないだろうか。深く共鳴する行動の原点であり、こうした気持ちを、私は大切にしていきたいと思っている。

彼は結果的に時期と方法を誤り「死」という取り返しのつかない失敗に至ってしまったわけで、本当に残念ではあるが、何事にも、たとえどんなベテランだって、はじめはあるし失敗もある。今でこそ私も現地スタッフとの綿密な情報交換により安全管理には十分気をつけているが、はじめてのときは現地の知り合いなど誰もいなかった。たまたまグループとして行くチャンスがあったからよかったものの、その後これまでこうして無事に活動が出来てきたのは、単に運がいいだけだったのかもしれない。今回の世論を見ると日本はまだまだ失敗を許容できない社会のようだが、失敗からしか学べないこともあるということを考えると、とてももったいない気がする。

「危ないから行くな」ではなく、なぜここまで危なくなってしまったのか、その原因は何なのかを追究し、危なくないようにするのが政府の役割ではないだろうか。民間人が入っていかなければ復興などありえないのだから。その環境を整えるはずが、全く逆の結果になっている。NGOとしても、このままではなかなか入ることは出来ない。

この度の日本政府側の対応についてだが、各職員は大変な努力をされたかもしれない。しかし政府は事件後すぐに自衛隊の撤退はしないと突きつけたことで、犯行グループとの交渉の糸口を完全に失ってしまった。事件後すぐにアルジャジーラを通じて町村外相が犯行グループにメッセージを出したので、交渉する気があるということだと思ったのだが。時間稼ぎなどのあいまい戦略、または内外で微妙に言い回しを変えるなど、他にも方法はあったはずだ。

また、その後も盛んに「撤退はしない」「テロリストの脅しには屈しない」の一点張りで、どう考えても犯行グループではなくアメリカ政府に向けて話しているとしか思えなかったし、アメリカ頼りの情報収集による誤報まで、この度の対応で完全にアメリカの属国ぶりを世界に印象付けてしまったような気がする。このままいくと、この先日本人はイラクに限らず、どこにいようが狙われるということも考えられる。

今回明らかになったことは、ついに日本人も殺害の対象になってしまったことだと思う。橋田さんたちのときは、ひょっとして対象を間違えていたということも考えられるが、今回のケースでは間違いなく日本人として殺されている。しかも遺体頭部には星条旗がかけられていたというから、これはまさに日本はアメリカと同じだというメッセージではないだろうか。

この先もアメリカについていくということは、一体どれだけのリスクが発生するということなのか、そして本当に日本の国民と財産を守ることにつながるのかどうか、真剣に考えていかなければいけない時期に来ていると思う。

そして現地治安の悪化は本当に深刻なようだ。先日、バグダッドのPEACE ONのオフィスが入っているアパートのオーナーの息子が何者かに誘拐され、何と100,000ドルもの身代金を要求されているという。連日の爆発事件もひどくなる一方とのこと。「米軍が各地での掃討作戦を激化すればするほど、それに抵抗する勢力やテロリスト達も強くなっていく」とサラマッドは嘆く。

この悪循環をどこかで断ち切らなければ、イラク国内の治安はますます悪くなる一方だろう。もはや軍事力にものを言わせたアメリカ主導のイラク復興政策は完全に破綻している。今こそこれまでの過ちを直視し、日本の自衛隊撤退を含めてその政策を根本から見直すことがなければ、この度の香田さんのような悲劇は繰り返されるであろう。

今回のような民間人を対象にした人質殺害事件は決して許されることではないという。それはその通りであるが、これは全て占領軍がこれまでイラクで行ってきたことの残虐性が凝縮された形で跳ね返ってきているということを忘れてはならない。昨年の開戦から今日までで戦争によるイラクの民間人の死者が10万人を超えたという報道もある。やはり問題の解決を戦争という暴力に訴えた結果の代償はあまりにも大きい。そしてこの暴力を支持し、政治的にも経済的にも事実上参加してきた日本政府、またそれを事実上支えている我々日本人ひとりひとりが負っている責任もまたとてつもなく大きい。結果として、我々のその責任を一身に背負い亡くなっていった香田さんの苦しみは計り知れないが、今こそその痛みを、我々ひとりひとりが想像し、この死が投げかける意味を考えていかなければならないときであろう。

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Comments

相澤さんの上記の文章、一文一文深くうなずきながら読ませていただきました。前回の人質事件の時から、事件への政府の対応や言い分、世論の反応にとても驚き悲しく思っていました。今回は政府が何か言うまでもなく世論の方から「行った人が悪いんだから」と言い出した感じがしました。前回の人質事件のときにきちんとしつけられていたので・・・そう思ってしまいます。国民感情というものはこうしていとも簡単に操作されてしまうんですね。今回は「無関心」も気になりました。心無い人はバッシングに走り、心優しい人は「お気の毒だけど、でも、今のイラクにどうして入ったのかしら・・・。正直新潟の方が気になるわ。」という感じ。香田さんは彼なりの志があってイラクに入ったようです。でも、たとえ志なく何となく行っただけであっても叩いたり首をかしげたりする前に救助に全力を尽くすべきではないでしょうか。私は韓国にいますが日本からのメールに「韓国の人質の人が亡くなったときにはかなり感情的になって大騒ぎだったみたいだけど、日本での人質事件への反応はかなり冷たいよ」と書いてありました。人が大変な恐怖にさらされているときにどうして「無関心」でいられたり「冷たい」態度でいられるのか、とても悲しくなります。
私も私の周りも政治的な活動には無縁です。ですから政治色の強い「人質事件」や「自衛隊派遣の是非」については何となく話しにくい雰囲気があります。話し始めると聞いてはくれますが半分引いてる感じがわかる人もいます。イチローやオリンピックの楽しい話題は話しやすいし盛り上がるけど「政治の話はちょっと」という感じがします。でも、今、私達のような政治活動に無縁な庶民が「無関心」で居続けたら地球は取り返しの付かないことになってしまいそうです。私に何ができるのか・・まず関連のブログを読ませていただくところから始めています。私が思っていることが合理的に理路整然と書かれていて、加えて温かみのある文章に出合うととても癒されます。これからも読ませていただきます。相澤さんのご健康と安全を心より願っております。

Posted by: M Sato | November 07, 2004 at 10:44 AM

M Satoさん、はじめまして。お返事遅れてしまいましたが、心のこもったコメントありがとうございます。とても励みになりました。まずは知ること、そして伝え続けることによって、お互い少しでも無関心を取り払っていきましょう。

Posted by: YATCH | November 12, 2004 at 01:10 AM

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