宝物
帰国早々PCがウイルスの被害にあってしまい、昨日は徹夜で格闘していた。ウイルス駆除ソフトを入れ替え何とか復活させたが、写真もテキストも帳簿もまだバックアップ前だったのと、明日から講演が続くとこともあり、せっかくバグダッドからの熱風を冷ます涼しい夜だというのに、ひとり冷や汗をかいてもがいていた。全く今ではパソコンがないと仕事にならない。思えば昔は大のアナログ派で、パソコンと聞くだけで拒絶反応を起こしていたものだが、やはり時代は変わるものである。しかしあまりにも依存していたなあと反省。
徹夜と言えば、イラクからなんとか出国できた22日、わずか一泊のアンマンでの夜もほぼ徹夜だった。JVC原さん、真紀さん、森元さんともずいぶん話したが、あと高遠さんとイラク人青年カスムと朝4時頃まで飲みながら話し込んだ(もちろんカスムは酒抜きで)。愛の熱病に冒されたサラマッドの影響か、話題は子ども達の文化交流案から、日本、イラクの男女の恋愛観の違いなどなどまで発展していった。カスムに言わせるとこれも大切な文化交流、全く同感だ。やはりこの星は愛で満ちている。イラクでも日本でも、お互い同じようなことで悩んだりしているんだなあと、妙に嬉しくもなった。やがて恋愛話から宗教へと話題は昇華していって、心地よい疲れが舞い降りた頃にはもう空港へ向かう時間になっていた。そして早朝にも関わらず、少しでも会いたいと言って薬剤師ハイサムさんは空港まで車で送ってくれて、とてもありがたかった。
帰国後しばらくネットにアクセスできていなかったので気が付かなかったが、先程ジャジーラのWebを確認したら、先日安田くんから解放に向けて何か出来ないかと相談されていたアメリカ人ジャーナリストのMicah Garen氏は解放されていたようである。本当に良かった。それにしてもこの全面包囲された状況で、解放を働きかけたムクタダ・サドル師もたいしたものだ。やはりただの血気盛んな若者では決してないと思うし、だからこそあれほどの支持があるのだろう。また、シバレイのブログでも書いてあったが、あの時K氏に相談したのは正解だったのかもしれない。もちろん彼の働きかけがどこまで奏功したかわからないが、そうした働きかけのひとつひとつが合わさって、ひとつの命をつなげていくんだと思う。
そういえばこのたびのイラクでの滞在では、イラクの友人達が私のことをとても心配してくれていた。外に出なくてもいいようにと、ハニさんはおいしい羊肉とオクラのスープを鍋にたっぷりと持ってきてくれたり、ジャラルさんにはすぐ近所だと言うのに、夜遊びに行って帰るとき、事務所の玄関まで送ってもらったり、皆しょっちゅう電話をくれて安否を確認してくれたりと、本当に、イラクの人々にしっかりと守られてきたからこそ、無事に帰国できたのかもしれない。その反面、いつもナジャフやサドルシティーでの惨状を耳にするたびに、同じイラクにいながら何も出来ないこと、そしていつものことながら、己の力のなさに歯がゆさも感じていた。しかしそれよりも、ここで生き続けなければならないという運命を受け入れた人々の強さと優しさに、いつも励まされ、何か名状しがたい大いなる力を与えられ、人間が生きるうえでかけがえのない大切なものをたくさんもらっているような気がする。これは昨年の戦争前、そしてあの戦争中からそうだったのだが、ここまで私を何度もイラクに向かわせる理由のひとつである。この命のつながりこそ、何物にもかえられない宝物なのだ。
Comments
裏磐梯・毛呂山町と連日の講演、イラクの熱風をまだ身にまとったYATCHの声を聞ける人達がうらやましいです。
「命のつながりこそ、何物にもかえられない宝物なのだ。」
29日荻窪で「イラク写真展工房」の写真展が行われます。一人でも多くの人に『命』のつながり、大切さを感じて欲しいです。
Posted by: kero | August 27, 2004 at 08:34 AM
私はいまだにどうもアナログ人間です。
書き込みひとつも、緊張してしまうのですけど、
今日は、ひとりで感動しているのももったいなくて、
やっぱり書かせてください。
サドル師支持者の民兵の方々の
武装解除開始のニュースが流れていました。
モスクや平和行進への爆撃もあったのに、
今、武器を捨てて歩くイラクの人達の姿に
なんか、泣けちゃいました。
こういう大きなニュースの影には
相澤さん達が、渡して、受け取ってきている宝物も
光っているのだと、私は思います。
そういう事、知れるだけでも
デジタルがあってよかった。
Posted by: amo | August 27, 2004 at 07:11 PM
keroさん、写真展おつかれさまです!連日こちらは寒いので、バグダッドの熱が冷めるかなと思いきや、今日の講演でもついつい時間をオーバーして話してしまいました。
amoさん、書き込みありがとうございます。まだまだ予断は許せませんが、僕もとても嬉しかったです。このような状況下で相手より先に武器を棄てるというのは、とても勇気がいることだったでしょう。もちろんシスターニ師の影響が大きかったのかもしれませんが、相手を信じて丸腰になる、それが一番強いのだと思います。
アナログもデジタルも、命をつなげるツールとしてうまく付き合っていきたいですね。
Posted by: YATCH | August 30, 2004 at 02:45 AM
YATCH3日間連日講演お疲れ様でした。特に昨日は2回講演だったし・・・(^0^)v(あの時間に帰路について自宅着23:40過ぎでした。やっぱりトホホの距離ですね。)
昨日の講演は、今までより更に熱く「命のつながり」への想いが投げかけられた感じでした。まさにバグダッドの熱風を見にまとった感じでした。
初めてではない映像も、決して馴れ合いになれない現実を、そして変わらない事実・真実を心に伝えてくれました。講演の終わりの方は声は出なくなって来るし、なんとなく演台に寄りかかるシーンがあったり、YATCHが倒れるんじゃないかとほんと心配になった程の熱い語りでした。(「お腹が空いている事に気がついた」なんて後で聞いた時は、ちょっと笑えたけど・・・)
YATCHから受け取った大切な想いを、私もしっかり伝えつないで行きたいです。お忙しいと思いますが、体気をつけて、『YATCH倒れる』なんて事になら無い様にして下さい。
手伝い必要な時は連絡下さい。もちろん力仕事OKです!!
Posted by: kero | August 31, 2004 at 06:57 AM
「熱風を見にまとった」→「身にまとった」でした。気持ちは伝わったかな・・・?ごめんなさいでした。
Posted by: kero | August 31, 2004 at 07:00 AM
keroさん、30日は力尽きた私の荷物もちまで手伝ってくれて感謝です!もう少しスタミナつけないとダメですよね。ナツメヤシが足りないのかも。
Posted by: YATCH | September 02, 2004 at 03:43 AM